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RIM 環太平洋ビジネス情報 Vol.21,No.83

米中覇権競争下で強まる中朝関係ー経済が悪化する北朝鮮を中国は支援か

2021年11月15日 向山英彦


最近、中国と朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)との関係(以下、中朝関係)が注目されている。本稿では、2000年代以降の両国の経済関係の変化をたどりながら、国際社会による北朝鮮に対する制裁と米中覇権競争が中朝関係にどのような影響を与えているのかを分析し、今後の動きを展望する。

北朝鮮では、国際社会による経済制裁と新型コロナ感染予防対策として実施した国境封鎖により貿易が急減し、経済が悪化した。韓国銀行の推計では、20年の成長率は▲4.4%であった。また、同年は自然災害により穀物生産が減少し、最近の食糧不足につながっている。こうした状況下、中国が北朝鮮への支援を積極化する可能性が出てきた。

今日までの北朝鮮の対外経済関係をみると、①建国(1948年)から60年代までの時期、②貿易の多角化が志向された70年代から80年代、③社会主義諸国との貿易が大幅に縮小した90年代、④南北交易の拡大により、韓国との貿易ウエートが高まった2000年代、⑤対中依存度が強まった10年代以降、の5つの時期に分けられる。近年は、北朝鮮の貿易額に占める対中貿易額の割合が9割近くに達している。

中朝の経済関係は2000年代以降大きく変化した。北朝鮮が不足物資を中国から輸入し、対中輸出で外貨を獲得するという一方的な関係から、中国企業による北朝鮮ビジネスや北朝鮮からの労働力の受け入れ、共同開発など、双方向的なものへ変化した。

アメリカのトランプ前政権は北朝鮮の非核化を進めるうえで、中国の協力を得ようとした。ここには、①北朝鮮の非核化は共通の目標である、②中国は北朝鮮に大きな影響力を行使出来るという認識があったと考えられる。

貿易依存度の点から、中国は北朝鮮に大きな影響力を行使出来るようにみえるが、中国は北朝鮮の経済破綻につながるような制裁は実施しないこと、北朝鮮ビジネスに関して中央政府の統制が十分に及ばないことから、北朝鮮の核問題に対する中国の影響力は限定的といえる。むしろ、米朝間の非核化交渉を契機に、中朝両国は関係を強めた。

北朝鮮は今後食糧不足の解消を優先し、自力更生路線を維持しつつも、中国との関係を強める可能性が高い。中国も北朝鮮経済の悪化を防ぐために、経済支援を積極化すると予想される。今後の中朝関係を注視していく必要がある。
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