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ニュースリリース

2024年06月20日

各位

株式会社日本総合研究所


全国地方公共団体を対象に、脱炭素地域づくりの実態調査を実施

~中間支援組織の充実や包括的支援体制づくりで脱炭素ドミノ実現へ~



 株式会社日本総合研究所(本社: 東京都品川区、代表取締役社長: 谷崎勝教、以下「日本総研」)は、全国の都道府県および特別区を含む基礎自治体を対象に、脱炭素地域づくりの実態についてアンケート調査(以下「本調査」)を実施し、結果および提言をホワイトペーパーとして取りまとめました。
 このホワイトペーパーは、以下からご覧になれます。
 新たな脱炭素地域づくりの実現に向けて
 ~全国地方公共団体の実態を踏まえて今後注力すべき取り組み~
 https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/pdf/company/release/2024/0620.pdf

■本調査の背景と目的
 気候変動対策や脱炭素化の潮流が世界的に加速する中で、地域社会・経済システムにおいても脱炭素イノベーションによる変革が不可避となっています。そうした中、ゼロカーボンシティ宣言や「脱炭素先行地域」(※1)づくりに取り組む地方公共団体が増えている一方、多くの課題が存在することも分かってきました。
 そこで日本総研では、全国の地方公共団体を対象に、脱炭素地域づくりの実態について、「脱炭素地域づくりの実態」「脱炭素地域づくりの進捗と課題」「今後の関心領域」をテーマにアンケート調査を実施しました。脱炭素地域づくりの加速に必要な今後の政策課題の洗い出しや「脱炭素先行地域」づくりの課題の細分化を図った上で、必要となる政策を提言することを目的としています。

(※1)2050年カーボンニュートラル実現に向けて、民生部門(家庭部門および業務その他部門)の電力消費に伴うCO2排出の実質ゼロを実現し、運輸部門や熱利用なども含めてその他の温室効果ガス排出削減についても、わが国全体の2030年度目標と整合する削減を地域特性に応じ実現する地域。

■調査概要
 調査期間: 2024年2月15日~29日
 調査方法: 紙面アンケート調査票による郵送法
 調査対象: 全国の都道府県および基礎自治体(特別区含む)1,788団体(「脱炭素先行地域」を含む)
 回答数 : 回答 661団体(回答率37.0%)

■実施概要
 全国の地方公共団体の脱炭素地域づくりの実態およびモデル性・先進性の高い「脱炭素先行地域」の課題を明らかにするために、A“全国地方公共団体向け(「脱炭素先行地域」を含む)”とB“「脱炭素先行地域」選定地方公共団体向け”の調査を行いました。

A 全国地方公共団体向け(「脱炭素先行地域」を含む)
 「脱炭素地域づくりの促進ポイント」「事業化フレームからの課題の細分化」「認知度と意欲のギャップの把握」という3つの視点から調査および分析を行いました。
①脱炭素地域づくりの促進ポイント
 先進的な脱炭素地域づくりに欠かせない、地方公共団体の推進体制における1)首長のイニシアチブ、2)庁内担当部署、3)中間支援組織(行政と地域の間に立ち、地域のさまざまな活動や団体の連携を支援する組織)の観点から、調査・分析を行いました。
②事業化フレームからの課題の細分化
 構想・計画などを社会に実装・制度化するために用いる事業化フレームの観点から、脱炭素地域づくりにおける課題を5つに分類し、各課題をさらに細分化して示しました。
③認知度と取り組み意欲のギャップの把握
 近年、脱炭素地域づくり周辺で注目されているキーワード(国が地域に推進を求めているテーマ)について、地方公共団体職員の認知度と取り組み意欲のギャップを把握しました。

B 「脱炭素先行地域」選定地方公共団体向け
 「脱炭素先行地域」づくり推進時の課題を細分化するための調査を行いました。地方公共団体の経営資源の最適化の視点から、ヒト、モノ、金、情報の観点で課題の詳細把握を行いました。

■各調査項目のサマリー
1 脱炭素地域づくりの促進ポイント
 脱炭素地域づくりにすでに取り組んでいると回答した地方公共団体は、全体の37%を占めています(図1)。



(1)首長による宣言と脱炭素地域づくりの推進状況の関係
 地方公共団体のトップである首長自らが行う「ゼロカーボンシティ宣言」を実施している地方公共団体では、脱炭素地域づくりが進んでいることが分かりました(図2)。宣言という形で首長が脱炭素地域づくりのイニシアチブを発揮することで、組織としての推進力が生まれていると考えられます。



(2)担当部署の違いによる脱炭素地域づくりの推進状況への影響
 脱炭素地域づくりの担当部署(主担当)は、温暖化対策担当が担うケースが最も多くなっています(図3)。その中で、最も推進状況が良好なのが、産業振興・企業誘致担当が主担当を担うケースです。副担当については、さまざまな分野の部署が担っていますが、特に農業・林業など特定のテーマを担当する部署が関わっているケースでの推進状況が良好です。
 また、他のテーマを担当する部署と横断的な体制で、地域が抱える課題(図4)や注力テーマと連動させ、コベネフィット(共便益)の創出を目指すことが、脱炭素地域づくりを進める上で有効と考えられます。




(3)中間支援組織と脱炭素地域づくりの推進状況
 中間支援組織が存在する場合、脱炭素地域づくりが進展していることが多いことが分かりました(図5)。最も進展しているのは、地球温暖化対策推進法に基づき、地球温暖化防止活動推進センターに指定された団体が担っているケースでした。次点は複数の周辺自治体と連携した団体で、産学官からなる団体、地元事業者なども脱炭素地域づくりの重要なプレーヤーとなっていることが分かります。



 しかし、脱炭素地域づくりに関係する中間支援組織を有する地方公共団体は、ごくわずかに限られます(図6 左図)。
 そして、その機能は、「啓発・広報活動」が主であり、「人材育成」や「専門的なサポート・コンサルティング」などの機能を担う事例は少ない状況です(図6 右図)。これは、地球温暖化防止活動推進センターに指定された団体が中間支援組織として活動しているケースが多いため、同センターの活動の根拠となっている地球温暖化対策推進法の第38条の規定(啓発・広報、照会・相談・助言、調査・情報分析など)に活動が限定されていることが原因と考えられます。



2 脱炭素地域づくりにおける課題の細分化
(1)脱炭素地域づくりにおける課題
 「庁内で専門的知見・ノウハウが不足している」「庁内の担当者が不足している」という、実施体制・事業スキームに関する課題が最も多くなっています(図7)。次いで多いのがコストに関連するもので、事業採算性や、エネルギー需給における「必要なエネルギー・資源、機器等の調達コストが高い」といったものです。そして目的に関する課題が続きます。
 脱炭素地域づくりは、地方公共団体における政策分野としては比較的新しい領域であるため、専門的知見の蓄積や人材確保、初期投資を中心とした事業採算性の課題が多いと考えられます。
 また、「庁内で専門的知見・ノウハウが不足している」をはじめとする5つの項目について、有効回答数のおよそ半数から4分の3にあたる300~500超の地方公共団体が課題と捉えています。これらは各分野に分散して存在することから、脱炭素地域づくりでは、ある特定の分野の課題がネックになっているのではなく、さまざまな分野の課題が複合的に存在していることが分かります。



(2)「脱炭素先行地域」における課題
 「脱炭素先行地域」の推進に係る事業進捗状況については、計画の半分以上遅延が生じている地方公共団体が、半数を超える結果となりました(図8)。



 「脱炭素先行地域の推進に係る課題および改善点」について、最も多く挙げられた課題は、「交付金の交付要件(交付対象)が限定的である。」など交付金関連で、次いで「再エネ等設備の設置場所の確保の調整・合意形成が難しい。」でした(図9)。さらに、「ヒト」に関する課題(「官民連携組織・チームの運営に係る人的リソースが不足している。」、「人事異動により専門人材が庁内に育たず、ノウハウが蓄積されない。」)も多い結果となりました。
 これらのほかにも、地方公共団体でコントロールが難しい課題で上位にあるもの(物価変動、再エネ機器の調達、需要規模の変更、交付金の交付要件)を除き、「電力会社による再エネ電気メニュー(※2)の新規開発に大きく時間を要する。」「行動変容につながる効果的・効率的な情報発信手法やツールが不明である。」などの課題が比較的上位に位置づけられています。
 「脱炭素先行地域」づくりの取り組みは、令和4年度に開始されたばかりで新しい政策であるため、「脱炭素先行地域」に選定された先進的な地方公共団体においても、交付金の活用条件や必要な人材・ノウハウの確保などさまざまな課題があることが分かります。今後、こうした障壁を取り除くための支援策が求められるところです。

(※2)「脱炭素先行地域」は、2050年カーボンニュートラルに向けて、民生部門(家庭部門および業務その他部門)の電力消費に伴うCO2排出の実質ゼロとする必要があります。そのため、脱炭素先行地域内の電力需要家は、①再エネ電力の自家消費、②再エネ電力を供給する発電事業者との相対契約締結、③再生可能エネルギー由来の電力メニューへの契約切り替え、④再エネなど電力詔書の活用、のいずれかの手段を選択する必要があります。



3 認知度と取り組み意欲のギャップ
 脱炭素地域づくりの周辺で近年注目されているキーワード(国が地域に推進を求めているテーマ)に対して、先進的で注目されている内容への地方公共団体の感度や考えを把握する趣旨から「認知度」を、またその内容を実際に取り組みとして自身の地方公共団体で取り組む意欲があるかどうかを把握する趣旨から「取り組み意欲度」を取り上げました。そして、認知度および取り組み意欲の選択肢に重み付け(標準化)し、その点数を基に、認知度に対する認知度と取り組み意欲のギャップ値(※3)を算定しました(図10)。上位に並ぶものは、地方公共団体の職員の「認知度」に対して「取り組み意欲度」と「認知度」の差が大きいものであり、下位に並ぶものは、現在の地方公共団体の職員の「認知度」に対して「取組意欲度」と「認知度」の差が少ないものであると分かります。
 その結果、認知度に対して取り組み意欲とのギャップが最も大きいものが、「SAF(持続可能な航空燃料)」で、「地域シンクタンク」「マイクログリッド、配電事業」「カーボンフットプリント」と続きます。逆に最もギャップが小さいものは「DX (Digital Transformation)」でした。

(※3)(認知度の標準化点-取り組み意欲の標準化点)÷(認知度の標準化点)の値により評価した。例えば、SAFの認知度は0.45、取り組み意欲度は0.26であり、ギャップ値は(0.45-0.26)/0.45=42.2%。DXの認知度は0.80、取り組み意欲度は0.69であり、ギャップ値は(0.80-0.69)/0.80=13.8%。



4 得られる示唆と提言
(1)中間支援組織の支援強化
 中間支援組織については、地方公共団体の課題として上位に挙がる人材育成や再エネ・省エネなどの専門的知見・ノウハウ提供機能を有しているほど、脱炭素地域づくりが進展しています(図11)。このことを踏まえると、中間支援組織は、従来の「啓発・広報活動」機能に加えて「人材育成」や、「専門的なサポート・コンサルティング」などの機能を担い、地方公共団体や地域の民間事業者などと連携を図りながら脱炭素地域づくりを推進することが期待されます。行財政の効率化の流れの中でこれ以上職員数を拡大することが難しい状況の中で、中間支援組織の取り組みを促進し、組織数自体を増やすとともに、機能充実が可能となるような中間支援組織への財政的支援あるいはビジネスモデルの詳細検討を進めることが望ましいといえます。



(2)「コベネフィット」創出につながる包括的支援
 2(1)で言及のとおり、地方公共団体が脱炭素地域づくりを推進する際に、今回活用した事業化フレームにおける分野(「実施意義・ビジョン」「目的」「エネルギー需給」「実施体制・事業スキーム」「事業採算性」)の中で、複数・横断的に課題が存在しています。そのため、各地方公共団体に対して、課題の所在を明らかにし、課題解決の優先度を見極め、最適な解決策を提供できる包括的な支援体制が必要である、と考えられます。さらに、1(2)で触れたように地域が抱える複数の課題を同時に解決する「コベネフィット」の創出につながる複層的・有機的な視点をもって取り組みの方向性を導出することが有効と考えられます。
 また、「脱炭素先行地域」をモデルとして全国に広げる「脱炭素ドミノ」を進めるには、①モデルの適用可能性の評価、②期待されるCO2排出量削減効果の評価、③実際に展開される地方公共団体への具体的な支援も同時に求められます。
 そのため、支援体制としては、例えば、コベネフィットの創出につながるモデルの特性や地域課題の種類、脱炭素化ソリューションの種類によって、専門知見を有する複数の民間事業者や有識者、学識経験者などの専門家が一体となったコンソーシアム形式が想定されます。

(3)今後詳細検討が必要なテーマ
 「脱炭素先行地域」の推進における課題としては、「電力会社による再エネ電気メニューの開発」「行動変容につながる効果的・効率的な情報発信手法やツール」が挙げられました。また、脱炭素地域づくりの周辺で近年注目されているキーワードのうち特に認知度に対して取り組み意欲とのギャップが大きかったのは、「SAF(持続可能な航空燃料)」「地域シンクタンク」「マイクログリッド、配電事業」「カーボンフットプリント」でした。
 前者の「電力会社による再エネ電気メニューの開発」「行動変容につながる効果的・効率的な情報発信手法やツール」については、「脱炭素先行地域」の他地域への波及的展開に向けて地域(地方公共団体・関連事業者など)のニーズや実態を把握して課題解決に向けた政策推進が期待されます。
 また、後者の「SAF(持続可能な航空燃料)」「地域シンクタンク」「マイクログリッド、配電事業」「カーボンフットプリント」については、認知度と取り組み意欲のギャップが生じている原因を明らかにし、国および地方公共団体は必要に応じて先進事例や取り組みメリットといった情報提供などによって認知度向上を進めるとともに、認知度と取り組み意欲のギャップを埋めるための政策的後押しが必要と考えられます。


■本件に関するお問い合わせ
株式会社日本総合研究所
【報道関係者様】 広報部                山口  電話: 080-7154-5017
【一般のお客様】 リサーチ・コンサルティング部門    青山  電話: 090-1053-4498
                            メール:200010-2020bunsan-ene@ml.jri.co.jp  
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