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ITで変わる? メディアの近未来  

出典:日経コミュニケーション 2005年7月15日号


メディア買収から始まった、アメリカの「通信と放送の融合」

 すでにIT・メディア大国であるアメリカでは、どのように『融合』が進んでいるのか。株式会社日本総合研究所の新保豊氏に、まずその辺りから話を聞いてみた。

 「最近、アメリカの放送とITを巡る動きは、トリプルプレイからクォードラルプレイになってきています。トリプルプレイというのは、CATV、固定電話(ISP)、映像(TV)の3つ。これに携帯電話が加わってクォードラルとなってきたわけです。これは、通信会社に対抗するCATVの動きです。日本と大きく遣うのは、アメリカのCATVの会社の経営規模が非常に大きいことです。コング口マリット化することでリスクヘッジをしている。生活に根ざした企業活動の部分、不可欠な情報のやりとりや日本の民法放送のような事業を行い、そこで安定収入を確保しておくから、ハリウッドからリスクの大きなコンテンツを持ってくるようなことができるわけです。そういう相互補完的な事業構造 によってITと放送を統合するような仕組みができてるといえますね。」

 まず、アメリカの放送ビッグバンは、1980年代に3大ネットのABC が小さなケーブルテレビ会社だったキャピタルシティーズに買収されたことから始まった。以後、キャピタルシティーズはW・ディズニーに、NBCはGE( ゼネラル・工レクトリック)に買収される。また、CBSも家電メーカのウ工スティングハウスが買い、さらにCATV最大手のバイアコムが再度買収を行うなど、業界を越えた「メテミイア買収」は当たり前のことになった。

 96年に改正通信法( ビル・クリントン法)が施行されると、放送と通信の融合はいっそう拍車がかかる。通信大手のAOLと、膨大なコンテンツを持つタイムワー ナーの合併。ニューズ・コーポレーションも、キャピタル・シティーズから地上波TVネットワークのFOXを買収し、ハリウッドの20世紀フォックス、野球のロサンゼルスドジャースといったコンテンツ生産からエンターテインメント事業まで行うコング口マリッ卜と化した。現在、アメリカのメディア業界は、これら5大グループに集約されつつあるという。

 さらに、固定電話やインターネッ卜接続サービスを展開する大手通信会社ベライゾンは、2005 年中にもフィオスというテレビ番組の放送サービスを始める。これは、光ファイパーを経由してテレビ番組を、パソコンではなくテレビで、いつでも好きなときにオンデマンドで見ることができるというもの。このサービスの基盤は、米マイク口ソフト社が開発した「マイク口ソフト TV」というソフトだが、同じく大手通信会社SBCコミュニケーションズは、すでにこのソフトを使った動画配いる。信サービス「Uパース」を昨年から行っている。

 携帯電話への動画配信でもおもしろい動きがある。携帯電話に搭載される通信機器の開発会社クアルコムが、携帯電話向けのサービス「メディアフ口ー」を2006 年から展開する予定だ。このメディアフローは、携帯電話とは別のテレビ周波数を使って、携帯電話に動画を配信するという。つまり、自社の顧客である携帯電話会社の需要を広げることで、自社の通信機器の発注を増やそうというわけだ。また、クアルコムはこのサービスを2007年から日本でも展開することを視野に入れている。この「風が吹けば桶屋が儲かる」式のビジネスは、果たして日本で成功するのだろうか。

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