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シーズをつかめ シンクタンクが提案する再生への処方せん
ICタグ使った医療廃棄物処理ビジネス

出典:日刊建設工業新聞 2004年11月8日

医療機関が抱える課題

「県から医療廃棄物の減量化プランを立てるように言われているが、現状どう進めていいのか見当がつかない」。ある医療機関の総務担当者の声である。 医療機関では、医療行為の効率化により使い捨て医療器材が増える傾向にあり、こうした背景から医療廃棄物が年々増加している。ただ、これは廃棄物の低減やリサイクル化が求められている世の中の流れに逆行しており、実際に都道府県から注意勧告を受けているというのが現状だ。 医療廃棄物の中でも感染性廃棄物は、処理委託費が高額で経営を圧迫する問題に発展しつつある。その一方で、医療機関の機能評価が始まり、医療廃棄物の適正処理について排出事業者としての責任を追及・監視されている。

期待される業務の外部委託

病院経営者(医療関係者)にとって、医療廃棄物の適正処理はまさに喫緊の課題となってきている。しかし、これらを解決するには「圧縮機など廃棄物の減量化につながる機器の導入」「信頼でき処理コストの安い廃棄物委託業者の選定」「感染性廃棄物とならない医療器材の選定」「現場における廃棄物の徹底分別の促進」など、様々な検討が必要だが、実際にはこれに対応できていないのが現実である。そこで考えられるのが医療廃棄物処理をアウトソース(外部委託)し、効率化することだ。 具体的には、次のような内容となろう。 まず、医療機関の内部において必要なことは、医療廃棄物の適正な処理区分の確立と分別の徹底を、継続的に各排出現場に推進していくことである。医療廃棄物は「鋭利な感染性廃棄物(注射針、ガラスなど)」「非鋭利な感染性廃棄物(ガーゼ、包帯、シリンダー、オムツなど)」「非感染性廃棄物(血液がついていないガーゼ、包帯、シリンダーなど)」の三つに大別でき、物によってはリサイクルも可能である。「鋭利な感染性廃棄物」がもっとも高額で1キロ当たり200円程度。一方、非感染性廃棄物は産業廃棄物と同45円程度の処理委託費が一般的だ。 ところが、各排出現場では分別廃棄を手間に感じるため、何を捨ててもおとがめのない「鋭利な感染性廃棄物」の処理区分に廃棄物が集中してしまうケースが多い。処理コストがかさむにもかかわらずである。つまり、現場での分別徹底が実施できれば、感染性廃棄物の減量化につながり、ひいては処理委託費の削減を実現できるのである。 一方、医療機関の外部においては、委託した医療廃棄物が適正処理されていることを証明できる仕組みが必要となる。不法投棄事件を引き起こした多くが許可処理業者であることを考えると、現行のマニフェスト制度はもはや役に立っておらず、廃棄物そのものが適正処理されていることを把握する仕組みを早急に確立する必要に迫られていると言えるだろう。

実現にはICタグの活用が有効

これらを実現するには、一つひとつの廃棄物を医療機関の内外において、いかに高度管理できるかが鍵(かぎ)となる。そこで期待されるのがICタグの情報蓄積力と物の追跡力だ。 例えば、ダイエットは体重計で随時現状の体重を把握しながら進めるのが常である。同様に、分別徹底の推進は一過性で終わってしまっては意味がない。各現場から出る廃棄物量を継続的に随時モニタリングできる仕組みが必要だ。医療廃棄物にICタグを貼付(てんぷ)し、計量器付きICタグ読み取り器を使えば、医療機関は机上のパソコンで各現場からの廃棄物発生量や分別状況を細かく確認できる。この仕組みを構築することは容易であり、有効であるはずだ。 また、医療廃棄物に貼付された廃棄物を、医療機関からの排出時、処理場の受取時、処理時、といった要所で追跡することで、適正処理の確認が随時可能となる。

市場に期待される事業者

今後、業務の更なる専門性を追求していこうとしている医療機関では、廃棄物処理だけでなく、非医療業務全体の一括アウトソーシングを検討する動きが出てくるだろう。ICタグの活用はこうしたニーズにこたえるソリューションを提供でき、新しい市場の創出につながる可能性もある。 そして、その市場では、「施設のメンテナンス」「清掃業務」「設備管理業務」などのノウハウを持つ事業者が活躍することになろう。 実際、ICタグを活用した医療廃棄物のトレースの実証実験は既に幾つか実施され、技術的にも可能という結果が出ている。この新しい市場の立ち上がりは、遠い未来の話ではないのである。

 

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