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自治体におけるアウトソーシング導入のポイント 第9回

出典:地方財務 2004年2月号

エネルギー分野のアウトソーシング


1 エネルギーを取り巻く背景

自治体は、多くのエネルギーを消費する公共施設の保有者であると同時に、廃棄物発電施設などに代表されるエネルギー生産施設の保有者でもある。すなわちエネルギーの大規模な需要家と供給者という2つの立場を持っている。こうした特性を持つからこそ、自治体は消費するエネルギー調達の効率化、生産したエネルギーの有効利用を工夫して、財政負担を大きく削減できる可能性がある。今回は、自治体のエネルギー分野の効率化を特にアウトソーシングの面から述べていくが、その前提として、まず2つの背景について整理をしておきたい。第1は、地球温暖化問題である。地球温暖化の原因物質である二酸化炭素の約9割は発電用などのエネルギー起源のものであるため、地球温暖化問題への対応はエネルギーを考える上で欠かせない視点だ。地球温暖化対策の目標値としては、京都議定書において、日本は温室効果ガスを2008年から2012年の平均で1990年比6%削減することを国際公約としている。一方で、1990年以降、温室効果ガスの排出量は増え続けているのが現状で、今後も抜本的な対策が求められている。自治体としては、「新エネルギービジョン」、「省エネルギービジョン」などを策定している地域も多く、新ネエルギー施設の新規建設、既存施設のエネルギー効率向上、省エネなど様々なプロジェクトが計画されている。こうした状況を踏まえ、エネルギー分野のアウトソーシングを考える場合、単なる財政負担削減だけではなく、温室効果ガス削減にもつながるものであるべきだ。たとえ財政負担を大幅に削減できるとしても、温室効果ガスの排出量を増加させるような方法を自治体が採用することはありえない。自治体は、環境性向上の視点から、地域の新エネルギープロジェクトを指導する立場にあるからである。第2は、エネルギー分野の規制緩和、特に電力自由化である。上下水道、廃棄物等の公益サービスは自治体が提供している。電力については、東京電力などの地域の電気事業者が発電、送電、配電を一括して行ってきたが、規制緩和によって一部の市場が開放されてきた。これまでに大きな規制緩和が2回行われている。
1つ目は、1995年に発電部門の規制緩和、特定供給条件の見直しが行われたことである。発電部門の規制緩和によって、電力会社は電源の調達の際に入札を行うことを義務付けられた。これにより、非電気事業者が卸電力事業に参入(独立系発電事業者:IPP)した。また、特定供給条件の見直しは、第三者であるエネルギー供給事業者が、発電機を顧客の施設敷地内に設置して、エネルギー販売を行うことを可能とした。この結果、多くの自家発代行事業者(オンサイト事業者)が登場している。発電部門の規制緩和は、需要家にとってあまりなじみがないが、特定供給条件の見直しは、エネルギー分野での効率化の可能性を大きく拡大した。オンサイト事業を活用して、電気と熱を供給できるコージェネレーションを施設に設置し、エネルギー供給を行うことで経済性と環境性双方の向上を図ることが可能になったためだ。技術の進歩ももちろん関係しているが、コージェネレーション等の分散型電源の導入実績は、1995年以降、指数関数的に増加している傾向にある。もう1つは、2000年の電力の小売自由化である。これにより、特定規模の需要家(2,000キロワット以上)向けの電力小売事業が自由化され、地域の電力事業者に限らず、特定規模電気事業者(PPS)からも電気が買えるようになったのだ。今後、2004年に500キロワット、2005年に50キロワットと自由化範囲の更なる拡大が予定されている。自治体の保有する多くの施設が自由化の対象となることで、電力会社以外からの電力調達の選択肢が増えてくる。以上のように、電力自由化はエネルギー分野の効率化の新たな選択肢を生み出している。また、コージェネレーションを設置することは環境性向上にもつながる。自治体としても、財政負担削減、環境性向上の観点から、規制緩和によって生まれた新たな選択肢を検討することが必要だ。

2 エネルギー分野における自治体の立場

詳細な話に入る前に、まずエネルギー分野での自治体の立場を整理しておく。自治体には、エネルギー分野に関して、以下の3つの立場がある。
1 庁舎、福祉施設、公民館、図書館、廃棄物処理施設、上下水道処理施設、し尿処理施設など数多くの公共施設を保有する、大規模なエネルギー需要家としての立場
2 廃棄物処理施設で発生する可燃ごみ焼却熱、及び下水道処理施設等で発生する消化ガス等、エネルギーの生産者としての立場
3 公共施設の地下や屋上、下水処理施設のポンプ場等に数多く設置されている大型の非常用発電設備をはじめとするエネルギー資産の保有者としての立場
自治体には、エネルギー分野といっても上記のような複数の立場があり、状況に適したアウトソーシングの考え方が必要となる。各々の立場におけるエネルギー分野のアウトソーシングの対象範囲は、次のように考えられる。第1に需要家の立場からは、電力、ガス、燃料等といったエネルギーを直接調達することに加えて、空調機、照明、ボイラー等のエネルギー設備のメンテナンスや運用等もアウトソーシングの対象となる。そもそも需要家として必要なのは、エネルギーそのものではなく、エネルギーを利用して得られる便益である。具体的には、一定温度のお湯、快適な室内温度、最適な明るさなどだ。既に病院等の大規模施設では、全館内の給湯、空調を集中管理しており、中央の制御室にはエネルギー関連技術者が常駐している。彼らは、日常的に必要な点検や簡単な補修作業までを担当し、ボイラー等については年度点検やメンテナンスが機器毎にメーカ等に別途に委託されている。このように業務の一部は委託(アウトソーシング)されているものの、効率化の可能性はまだまだ残されている。というのも、委託業務の中心的な内容は、既存のエネルギー関連機器が故障することのないよう維持管理することに留まり、効率化という視点が欠けているからだ。一方で、中小規模の施設においては、エネルギー関連技術者すら不在である。規制緩和を背景にエネルギー分野のサービスが増えている昨今、外部の専門的なサービス会社にアウトソーシングすることでエネルギー関連の業務はまだまだ効率化できる。2つ目のエネルギー生産者の立場としては、エネルギーの生産から利用までをアウトソーシングできる可能性がある。エネルギーの生産量は、設備の運用方法によって異なる上、生産したエネルギーの価値も利用方法や販売先によって異なる。例えば、廃棄物処理施設の場合、焼却の安定性や量によって発電効率が変わる。また、発電した電力の販売単価も販売先や販売時間によって異なる。現在でも、廃棄物処理施設等のエネルギー生産設備の維持管理は、民間企業に委託されていることが多い。しかしながら、廃棄物処理施設はそもそもの目的が廃棄物の適正処理であり、エネルギーの生産ではないので、エネルギー利用の効率化という観点がほとんど考慮されていないのが現状だ。詳細は後述するが、廃棄物処理施設から得られるエネルギーは新エネルギーとして位置づけられる環境性の高いエネルギーである。利用拡大は政策的な方向性とも一致しており、エネルギー生産量の増大、効率的な利用方法の工夫の両面から検討する必要がある。最後に、既存のエネルギー資産の保有者の立場については、非常時にしか利用していないエネルギー資産を通常も有効利用するために、アウトソーシングを活用できる可能性がある。しかしながら、自治体の保有するエネルギー資産の中には、下水処理施設の非常用発電機など、洪水時などの緊急時に地域の安全性を確保する、といった社会的な意味合いの強いものも多い。こうした特殊なエネルギー資産については、効率化という観点だけではなく、安全性確保を確実にした上で有効利用を図っていかなくてはならない。実際には、個別の事情に応じて、有効利用の可能性等を調査・検討する必要があるだろう。以下では、エネルギー需要家、エネルギー生産者としての立場から、エネルギー需要施設、エネルギー生産施設におけるアウトソーシングの考え方を見ていくこととする。

3 エネルギー需要施設におけるアウトソーシングの考え方

先述したように、エネルギー需要施設では、電力、ガス、燃料等といったエネルギーの直接調達に加えて、エネルギー消費設備のメンテナンスや運用等もアウトソーシングの可能性がある。エネルギー需要施設の効率化の視点としては、次の3つが考えられる。1つ目は、省エネルギーの視点である。省ネエルギーについては、単なる効率化の選択肢という枠を超えて、規制強化への対応も必要になっている。省エネ法(エネルギーの使用の合理化に関する法律)の改正によって、これまで製造業等5業種の工場に限定されていた第一種エネルギー管理指定工場の指定対象を全業種に拡大されるなど規制が強化されたからだ。この結果、大きな庁舎、自治体病院等についても、将来的な省エネ計画(中長期計画)の作成・提出、定期の報告等が義務づけられた。この中では、エネルギー消費原単位で中長期的に年1%以上の削減目標を立てて、計画的に省エネを行うことが求められている。省エネルギーについては、ESCO(Energy Service COmpany)の利用が考えられる。ESCOとは、施設を所有する顧客に対して省エネルギーの提案から実施までの包括的なサービスを提供し、原則として環境を損なうことなく省エネルギーを実現し、さらにはその結果得られる省エネルギー効果を保証するサービスのことだ。ESCO事業者へのサービスフィ-の支払いは、顧客の省エネルギーによるコストダウンの一部で賄われる。既に自治体でもESCOの導入は始まっており、規模やエネルギーの利用特性にもよるが、概ね10~30%の省エネ効果があるのが一般的だ。省エネは、単なるコスト削減だけでなくCO2の削減も期待できるので、自治体としては積極的に活用していきたい。2つ目は、コージェネレーションシステム等の分散型電源の導入だ。先述したように、1995年の自由化によって、自家発代行が認められた。コージェネレーションは、エネルギーの総合的な利用効率を80%近くにまで高めることができる。通常、火力発電の発電効率は50%未満であるから、効率性の向上によって環境性と経済性の向上が期待できる。自治体の施設でも、システムを管理できる人材が常駐している大規模な病院等を中心に、コージェネレーションシステムを導入している施設も多い。しかしながら、故障対応や設備の更新費用などが負担となって、当初予定していたほどコスト削減が実現できていない事例も多い。オンサイト事業者を活用すれば、敷地内に設置するものの設備の所有権は事業者側にあり、運用時のリスクも事業者が負担するので、予期せぬ後年度負担は発生しない。この結果、経済的なメリットを期待通り得られる可能性は飛躍的に高まる。エネルギー関連設備を管理できる人材が不在の中小規模の施設でも、オンサイト事業者を活用することで、コージェネレーションシステムの導入が可能になる。最後は、電力の調達である。2000年3月より、特定規模需要の需要家(2000キロワット以上)向けの電力小売部門が自由化されたことにより、多くの新規事業者が登場した。既に多くの自治体で、電力入札を行い、地域の電力会社から新規事業者に購入先を切り替えることによってコストダウンを実現している。今後、2004年に500キロワット、2005年には50キロワットと更なる小売自由化の範囲の拡大が予定されているため、電力の調達を工夫できる施設の数は増加する。近い将来には、複数施設の電力をまとめて調達することも可能になる。電力は、なるべく負荷を平準化した方が安く調達できる。季節や時間帯によって使用電力量に偏りがない方が、供給事業者としても発電施設を効率的に運用できるためだ。負荷の平準化という観点から自治体の所有する施設を見ると、種類が豊富であることから工夫の余地が大きい。例えば学校などは一般的に電力負荷がピークを迎える夏休みのため負荷が低いという特徴がある。そのため、他の施設とうまく組み合わせれば、負荷が平準化できる。電力の調達先の変更は、自治体にとって一概に環境性の向上につながるとは言えないものの、財政負担軽減の観点から取り組んでいく必要がある。このように、電力の調達については、組合せの工夫によってコストダウンのレベル異なるから、できれば自治体施設の電力調達を横断的に行える体制を整えることが望ましい。電力供給の契約は供給事業者と施設所有者が結ぶから、必ずしも調達そのものをアウトソーシングする必要はないが、組合せの工夫を含めた調達の計画や手配をアウトソーシングすることはできる。一方、大規模な施設では、エネルギーデータは十分に取得されているがうまく活かせていない。最近では、既存のエネルギーデータに加え、不足のデータを追加して、エネルギー利用の最適化をコンサルティングする事業者も登場している。調達は、そうした事業者にアウトソーシングすれば効果的だ。以上、エネルギー分野の効率化の可能な項目について示したが、こうした効率化を図りながらエネルギー関連のアウトソーシングを実施する上で、重要と思われるポイントは3つある。1つ目は、アウトソーシングの範囲の考え方である。自治体には上記のようなエネルギー事情に精通した担当者が不在であることから、省エネルギー、分散型電源の導入、電力の調達の計画から実施等、なるべく多くの業務を民間事業者へアウトソーシングした方が効率的である。例えば、省エネの計画から実施までをESCOに任せ、コージェネレーションは、運用を行う人材を内部に抱え込むのではなく、運用を含めてオンサイト事業者にアウトソーシングしてしまった方が、結局はライフサイクルコストを最小化することにつながる。更に進んで、より包括的なアウトソーシングも考えられる。ESCO、オンサイト事業の採否も含めた施設のエネルギー関連設備の運用・更新の一切を民間事業者に任せてしまうのである。大規模な施設のように、エネルギー関連設備の維持管理を担当しているエネルギー関連技術者を既に抱えていても、省エネ計画から実施までを含めた包括的なアウトソーシングは十分に効果がある。エネルギーマネジメントという視点は一般的ではないが、長期的な視点に基づく管理・運用があって始めてエネルギー利用を効率化し、環境性、経済性のメリットを最大化することができる。
2つ目は、ESCOやオンサイト事業の委託方法である。単年度契約を前提としているため、長期的な支払いを約束しなくてはならない事業をPFIで行っているケースがある。しかしながら、ESCOやオンサイト事業にPFIの手続きを適用するのは無理がある。PFIが適用される廃棄物発電施設等のプラントや病院などは、ライフサイクルで見ると事業規模が数百億円単位に達する。一方、ESCOは対象範囲がエネルギーに限定されているため、仮に事業期間を10年としても10億円がせいぜいと事業の規模が小さい。このように事業規模が10分の1、もしくはそれ以上に小さな事業に対して、プラントや病院と同じように、評価委員会等を設置し、過大な見積設計図書の提示を求めることは、自治体、民間事業者双方にとって過大な負担となり、また、入札参加者が限定されるなどの問題につながりかねない。長期債務負担イコールPFIの手続きという画一的な発想ではなく、エネルギーのアウトソーシングに相応しい効率的な調達方法を考えるべきである。
3つ目は、投資回収期間の考え方である。ESCOやコージェネレーションの導入には、導入設備の投資が何年で回収できるかが採否の条件となる。民間企業がESCOを採用する場合、契約期間が5年未満というのが一般的だ。オンサイト事業の場合は、メリットにもよるが10~15年程度である。自治体の場合も民間企業の場合と同様に、なるべく早い投資回収が望ましい。ただし、自治体の場合は、経済的なメリットに加え、環境的なメリットも考慮に入れた判断を行うことが望ましい。ESCOは、様々なメニューが存在し、複数のメニューを組み合わせて、トータルでコストダウンを図る。民間企業の場合、経済的な理由から省エネルギー効果が大きいと分かっていても、採用できないメニューもあるが、自治体の場合は、省エネルギー効果を優先することも考えられる。例えば、単独ではコスト増となる太陽光発電等を導入しつつも、全体としてエネルギーコストは維持しながらCO2は大幅に削減することも可能である。従来のように、経済的メリットが出なくても環境性の高い事業への費用負担を実施してきたのに比べると、省エネルギーでコストダウンできた分の費用を更なる環境性向上への投資に当てることは意義がある。

4 エネルギー生産施設におけるアウトソーシングの考え方

先述したように、エネルギー生産施設ではエネルギーの生産からエネルギーの利用までをアウトソーシングできる可能性がある。エネルギー生産施設の効率化の視点としては、次の3つが考えられる。1つは、エネルギー発生量の増大だ。すなわち、施設から外部へ供給できるエネルギーの量を増やすということである。廃棄物処理施設や下水道処理施設で発生するエネルギーは、運用によっては増大できる可能性がある。廃棄物処理施設等の主たる目的は、ごみの適正処理でありエネルギーの生産ではないことから、エネルギーの面での効率化が行われていないのが現状である。もちろん本業に影響を与えないことが条件となるが、廃棄物処理に伴うエネルギー消費の適正化や安定的な焼却等を行うことでエネルギー発生量を増やすための工夫の余地は残されている。2つ目は、エネルギーの利用方法だ。電力自由化によって、電力の利用方法の選択肢が増えている。従来、余剰電力として電力会社に固定価格で引き取られていたが、自由化で新規事業者が複数誕生したため、販売先が多様化している。加えて、全国でもまだ導入事例はないが、廃棄物処理施設等の電力を他の公共施設等に送電することで、その公共施設等の電気料金の一部を削減することも考えられる。廃棄物発電からの電力の買取価格は、平均すると8円/kwh程度である。一方で、他の自治体施設では15円/kwh程度で電気を購入している施設も多い。送電に要する費用は別途に負担する必要があるが、廃棄物発電からの電力を他の自治体施設で利用することで費用負担を大きく削減できる可能性がある。これについては、先進的な自治体を中心に検討が始められており、近い将来、実例が出てくると思われる。可能性として、十分検討したいところだ。
3つ目は、エネルギーの環境価値の活用だ。廃棄物処理施設で発電した電力のうちバイオマス(動植物に由来する有機物)相当分は、2003年4月に施行されたRPS法(電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法)の区分で”バイオマス発電”に相当する新エネルギーである。本法が施行されたことにより、電気事業者は一定量の新エネルギー由来の電力を確保することが義務付けられた。これにより、廃棄物処理施設の電力の一部は電力としての価値だけでなく新エネルギーとしての価値(新エネルギー等電気相当量:RPS法の証書)も認められたわけだ。もともと自治体の廃棄物発電施設から発生した電力は、他の自家発電設備等から発生した電力と比較して優遇された価格で買い取りが行われてきた。今後は電力とRPSの証書を分けて販売することで、更なる高価買取りの可能性もある。ここまで示した効率化を図るためのアウトソーシングを実施する上で、民間事業者にインセンティブを付与することが重要である。廃棄物処理施設等のエネルギー生産設備の運営は既に民間事業者に業務委託されている例がほとんどである。本業の廃棄物処理を安定的に行いながら、上記のような効率化を図っていくためには、運営を実施している事業者に効率化のインセンティブを与えるのが現実的だ。エネルギー生産量の増大や販売収入の増大に応じて、その収入増大分の一部を民間事業者に還元するのである。既に、廃棄物処理のPFI事業では、業務効率化のインセンティブを民間事業者に与えるため、生産したエネルギーや資源を民間事業者に与えたり、利用方法に自由度を持たせたりしている。そうすることで、発電効率の向上や売電収入の増大、リサイクル効率の向上と資源の価値増大などが見込めるためだ。既存施設のアウトソーシングについても業務範囲を拡大し、効果に応じたインセンティブを与えることで、同様な効果が期待できる。今回、エネルギー需要施設、エネルギー生産施設に関する効率化の視点を示したが、より大きな視点から地域エネルギーの効率化として捉えると、可能性はさらに大きくなろう。例えば、青森県等で始まっているマイクログリッドなどである。マイクログリッドとは、エネルギー生産とエネルギー消費の両方を、原則として地域内で行うというコンセプトで、電気だけでなく熱の供給を地域で最適化させる分散型エネルギーシステムである。マイクログリッドでは、グリッド内の施設から発生するエネルギー及び消費するエネルギーをトータルでコントロールする必要があるので、より包括的なアウトソーシングの可能性も出てくるだろう。エネルギー分野の規制緩和は始まったばかりで、効率化の選択肢が増えているわりに自治体が有効に活用できている例は少ない。将来的なエネルギー分野でのアウトソーシングの可能性は大きく、できるところからでも取組みを始めることが必要だ。

 

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