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環境商品の市場動向

出典:月刊グリーン情報 2003年5月号掲載

1. 住環境改善への関心

(1)住環境に対する関心

 ガーデニングブームに見られるように、住宅にどのように花や緑を取り込むかが消費者の関心を呼んでいる。 また屋上やベランダなどの空間にも植物を導入しようという緑化建築にも目が向けられだした。

 1990年代から語られはじめたガーデンエイジとは、「家」をベースとして外気の爽快感をインテリアに取り入れること、そして室内環境の快適さをアウトドアに持ち出すことである。これは「インサイドアウト」と「アウトサイドイン」の思想と言うことができる。
 2000年代を迎えてインドアグリーンに対する意識に変化が出てきた。室内での植物を単なる観賞用という視点だけでなく、環境や健康、精神的なリラックス、インテリアデザインなどという要素と関係をつけるという動きが出てきたのである。

 シックハウス症候群に代表されるように住宅と環境・健康との係わりについて関心が強まっている。また苔玉などの商品の登場により「和」の植物に注目が集まっている。「和」は「和み(なごみ)」に通ずることもあり、室内の植物が癒しのトレンドと結びついた。江戸の園芸が注目されているのもこの流れとつながっている。
 こうした動きにより植物の活躍の場面に広がりが出てきたということである。環境そして健康やリラクセーションと植物を関係付けることで園芸ビジネスの事業拡大チャンスが存在するのである。 
 
(2)グリーンコンシューマーの台頭

 今注目すべき動きは、優先的に環境負荷の少ない商品を購入しようとするグリーンコンシューマーの台頭である。

 消費者が自らのライフスタイルを見直し、主体的に買い方を変えることで社会の仕組みを環境に配慮した方向に変えていく運動は「グリーンコンシューマー運動」と呼ばれている。1988年(昭和63年)にイギリスで発行された「ザ・グリーンコンシューマー・ガイド」(ジョン・エルキントン、ジュリア・ヘイルズ共著)が、この運動を世界的に広げるきっかけになったといわれており、現在では、我が国でも各地で消費者・市民グループがこの運動に取り組んでいる。

 このグリーンコンシューマーといわれる新しいタイプの消費者はわが国ではまだ全消費者の2~3%に過ぎないが、今後消費者の環境意識の高揚や環境教育の進展、企業の消費者に向けた環境情報の開示などを考えれば、さらにこの動きは加速するものと思われる。ちなみにドイツではグリーンコンシューマー比率が60%を超えたといわれている。2000年代においてはあらゆる産業分野においてグリーンコンシューマーを意識した商品開発や企業経営が行われなければならない。

2. 住環境改善に関する市場の動向

 (1)環境ビジネスの動向

 環境庁では1997年及び2010年のエコビジネス(環境ビジネス)についてその市場規模及び雇用規模について推計を行っている。エコビジネスとはOECD(経済協力開発機構:グローバル化に伴う経済、社会、ガバナンスの課題に取り組む国際機関)の分類にしたがって「『水、大気、土壌等の環境に与える悪影響』と『廃棄物、騒音、エコ・システムに関連する問題』を計測し、予防し、削減し、最小化し、改善する製品とサービスを提供する活動」と定義される。

 その結果、図表1に示されているようにエコビジネスの市場規模は1997年で24兆7000億円で、わが国の国内生産額の2%強を占めるに至っている。また2010年には約40兆円に達する有望成長産業であることが分かる。雇用規模では1997年の70万人から2010年時点では87万人に増加すると推計されている。
 
【図表1】 わが国のエコビジネス市場規模の現状と将来予測 
  
(出所)
 「わが国のエコビジネス市場規模の現状と将来予測についての推計」環境庁企画調整局を参考に日本総合研究所作成  
 
 この環境ビジネスの領域は幅が広い。別の視点からその事業の内容を整理したのが図表2である。ここでは技術系環境ビジネスとソフト系環境ビジネスという二つの大分類で環境ビジネスを整理している。住環境改善関連ということでは環境調和型施設(住宅)やエコマテリアル、自然修復・復元ビジネスなどが係わってくるものと思われる。
 
【図表2】 技術系環境ビジネスとソフト・サービス系環境ビジネス 
●技術系環境ビジネス  
  
●ソフト・サービス系環境ビジネス 
  
(出所)
 「新・地球環境ビジネス2003-2004」エコビジネスネットワーク編(産学社)を参考に日本総合研究所作成

 また、エコグッズ(生活の中で日常的に利用される環境配慮型商品)や屋上緑化に関しては図表3のような市場規模算定が行われている。 

【図表3】 エコグッズと屋上緑化の市場規模(単位:億円、%)  
  
(出所)
 「新・地球環境ビジネス2003-2004」エコビジネスネットワーク編(産学社)を参考に日本総合研究所作成 
 
(2)住環境改善ビジネス

 住環境を改善するビジネスという枠組みで見たときに、狭義で考えれば関心の強いシックハウス対策のための事業分野が挙げられよう。この分野では図表4に示したように、木質床材、壁材、壁紙、塗料、換気などで新たな商品開発が進められている。住宅分野での健康ニースの高まりはここにあげた新たな商品分野を創造しているが、これらは「賢材」という新市場と呼ばれることもある。さらにこの「賢材」が進化して、材料自ら検知して自ら判断、結論を出し、自らが指令したり行動を起こすといった一連の機能を併せ持つ材料として「インテリジェント材料」に期待が持たれている。  
 
【図表4】 シックハウス対策の商品分野 
  
(出所)
 「季刊チルチンびと」2003年春号(風土社)、「エコ住宅」倉田亮他監修(一橋出版)などを参考に日本総合研究所作成 


 また広義で住環境改善ビジネスを見れば、住宅という商品そのものや、住宅内での健康やリラクセーションをもたらす商品やサービスが含まれよう。
 住宅ビジネスでは環境配慮を総合的に取り入れた住宅が普及の兆しを見せている。国土交通省ではこうした住宅の普及拡大に取り組んでいて「環境共生住宅推進協議会」を設立している。それと関連して財団法人建築環境・省エネルギー機構では1999年より環境共生住宅の認定事業をスタートしている。その認定基準は図表5の必要要件に掲げた基準を原則としてすべて満たし、さらに提案類型の2つ以上に該当する高度でユニークと認められる工夫や提案がなされたものでなければならない。

 住宅業界では環境問題への対応を自ら積極的に取り組む姿勢を示していかなければならない。そこに新たなビジネスチャンスが潜んでいるのである。  

【図表5】 環境共生住宅の認定基準 
  
(出所)
 「季刊チルチンびと」2003年春号(風土社)、「エコ住宅」倉田亮他監修(一橋出版)などを参考に日本総合研究所作成

3. 園芸業界として取り組むべきことは

3. 園芸業界として取り組むべきことは

 以上見てきたように、環境への関心が高まりつつある中、住宅分野で新たな環境と健康のニーズの高まりに対応したビジネスチャンスが広がっている。園芸業界もこの動きに対応して新たな商品やサービスを提供していかなければならない。図表6は人間と植物の関係を整理したものである。環境や健康との関係の中で植物の役割をあらためて見直し、事業創造を行うことが望まれている。 
 
【図表6】 人間と植物の関係   
 
(出所)
日本総合研究所作成 

 最近あるテレビ番組を観ていたら、年齢を重ねても美しさを保っている女優が登場し、「美しさを保つ秘訣は何ですか?」という司会者の問いに対して「それは、毎日美しいものを観ることです。たとえば、部屋の中に花や緑があるだけで人間は美しさを保つことが出来ます。」と応えていた。
 植物と環境・健康だけでなく、美との関係も花き園芸業界にとって重要なことであると感じた。

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