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ごみ処理施設 退職技術者の「腕」生かせ

柴田協子

出典:朝日新聞 2003年10月25日  

ダイオキシンの排出規制強化に伴い、ごみ処理施設の焼却炉は、高温で運転されるようになった。だが、高温での操業は制御が難しく、コストも高くなりがちだ。ごみ処理施設の安定操業を、現場技術の継承や効率化の観点から考えたい。

私は高齢者雇用と技術継承をテーマに、社内の「エンジニアリング・サポート・サービス研究会」に所属している。先日、千葉県内の自治体のごみ焼却炉の現場を見学した。つなぎ服の上から、使い捨ての化学防御スーツに頭から足首まで身を包み、防塵マスクとヘルメットを着けた。掃除した直後だったが、全身灰まみれになった。
炉の点検作業にも同行した。ボイラーの水管が劣化し曲がっていないか、照明をあてながら慎重に見ていく。ごみが集積される場所は、悪臭が漂う。夏は施設全体が蒸しぶろ状態になる。自治体の技術者は「毎日現場で点検していれば、おのずから見るべきポイントやこつが身につく」と語った。若手職員を施設に連れて行き、指導している。
ごみの焼却作業は、ごみの種類の割合と量が時々刻々と変わり、予測がつかない。機械の特性を熟知した上で、きめ細かく点検しながら稼動させる作業は「職人芸」といえる。

だが、こうした現場の責任者となる技術者が、自治体から業務委託された機械メーカーでも自治体でも高齢化が進む一方、引き継ぐ若手の確保は難しくなっている。自治体職員が「過酷な職場」に配属されても異動が多いので、経験を伝えるまでには至らない。委託先の機械メーカーなども、管理職になったり子会社に出向したりすれば同じだ。現場の技術を伝えるため、退職技術者の活用策を提案したい。

退職した技術者で組織を作り、一定の実務経験がある人に登録してもらう。施設のプロジェクトごとに、チームを組んで請け負う。登録者は自治体の施設の維持管理態勢や状況をチェックし、現場責任者にアドバイスする。委託された民間企業が提示する管理費用の妥当性も評価し、自治体に報告し、報酬も受け取る。

こうした仕組みで、自治体は安定操業できるうえ、維持管理技術を一定水準に保つことが可能になる。費用が、必要以上に使われていないかも判断できる。
技術者は退職後も自らの経験を生かすことが期待でき、双方に利点がある。

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