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情報化時代のキーワード
~「e革命」が変えるビジネス~

新保 豊

出典:日本経済新聞社「日経フレッシャーズ大事典」 2000年3月

ポイント

◇e革命で「収穫逓増型」のビジネスモデルが出現しています。
◇これまでと異なる新たなベンチャービジネスが注目されています。
◇e革命の恩恵を受けるのは、ベンチャー企業だけではありません。

●経済の法則を大きく変える

 わが国では1999年あたりから「e革命」が始まりました。この「e」は、エレクトロニクス・コマース(電子商取引)の頭文字をとったものです。
 ネット利用者は全世界で急拡大し、いまや2億人近くにまで膨らんだといわれています。うち米国の利用者が約1億人、日本の利用者は2千万人と推定されています。産業が大きくデジタルエコノミーに移行しつつあるのです。
 このデジタル時代には、経済の法則も大きく異なります。経済学には、単位インプットの量が大きくなっても単位当たりのアウトプット量は下がる「収穫逓減の法則」があります。自動車エンジンなど製造業の多くがこれに当ります。
 一方、IT(情報技術)を用いたネットビジネスには、成長の軌道が直線的ではなく、尻上がりに加速度的に伸びていく「収穫逓増の法則」が働きます。例えば、一度OS(基本ソフト)を作れば、後はそれを多くのユーザーにただ同然のコストで使えるようにしているマイクロソフトや、ここ1年で500万人増加させ会員数が1,900万人を突破したAOLのビジネスモデルが代表格です。  

●ネットベンチャー企業の出現

 1999年4月のフォーチュン誌の選んだトップ企業500社のうち、eコマース関係の会社が42%を占め、2000年には1兆ドルの市場規模になる勢いです。e革命により市場の重要な機能・要素が、ネットへ移行し、劇的な変化が起こっています。コストが大幅に低減されるだけでなく、サービスに必要な時間が短縮されたり、ビジネスの主要プレイヤーが変わったりもします。ビジネスルールそのものも変わりつつあります。
 米デル・コンピュータはパソコン(ハード)のネット直販方式により、販売代理店や小売店向けの中間マージンをゼロにし、長らくトップの座にあったコンパックを引きずり下ろしました。
 ネット上の金融リテール分野(サービス)では、いままでの金融機関の100分の1にもなりました。、また、取引サイトの上位は、AOLやヤフーのように非金融機関が独占しており、既存金融機関にとって大きな脅威となっています。  

●「ハイブリッド型」ビジネスがカギ

 純粋にネットのみで出発したベンチャーだけが、e革命の恩恵を享受するのではありません。それまで築き上げた事業基盤(顧客データ、会員組織、代理店網、関連事業等)をもつ企業であれば、それらを有効に活かせます。ネットとの組合せしかたによっては、ゼロからスタートしたベンチャーよりも、優位に立てるわけです。
 米国では「クリックス・アンド・モルタル(ネットと店舗)」と呼ばれる新業態が注目を集めています。日本でも、現行の事業基盤とネットとの相乗効果を狙う「ハイブリッド型ネットビジネス」に、一見フットワークの重そうな企業であっても、異なる法則の支配するネットビジネスを成功させるヒントがあるのです。 
 

【図表】 リアルとネットの世界 

 

(出所)日本総合研究所 ネット事業戦略クラスター(現ICT経営戦略クラスター)

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