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CSRを巡る動き原稿:気候変動への適応策

2013年09月01日 ESGリサーチセンター


2013年7月に、世界気象機関(以下、WMO)は、「世界の気候2001-2010 極端な十年」を発表しました。この報告書では、2001年からの10年間の世界平均気温は、14.47度で観測史上最高を更新したと報告しています。WMOの報告書は、139か国で行われた調査に基づいておりますが、これらの調査対象国の94%近くが、2001~10年を観測史上最も気温が高かった10年間とも記録しています。この期間に最も頻発した異常現象は洪水で、被害者は2,000万人に上るとされています。世界中で異常気象が発生し、またその影響が人間の生活にも大きな影響を与え始めているといえます。

今まで世界では、省エネルギーや再生可能エネルギー等環境技術の活用を通じて、使用する化石燃料を減らし、CO2排出量を削減することで、気候変動の影響を緩和するための方策が中心に行われてきました。しかし、気候変動に伴う影響が顕在化してくるなかで、大きく変わる環境に適応していくための方策を考えていくことも必要となってきています。企業にとっては、気温上昇、海面上昇など気候変動に伴う物理的影響が顕在化した世界に順応するための方策、自然と企業の事業活動を調整し、被害を防止・軽減する方策を講じる必要に迫られてきたともいえます。

欧州委員会では、2013年4月に、気候変動適応戦略(An EU strategy on adaptation to climate change)を採択しました。この戦略のなかでは、加盟国における気候変動に向けた適応策への行動促進、農業や漁業といった特に気候変動の影響に脆弱なセクターにおける適応対策促進としてのインフラ体制の強化などが目標に定められています。さらに、2013年6月には、米国のオバマ大統領が、気候変動対応行動計画(Climate Change and President Obama’s Action Plan)を公表しました。この計画のなかでは、気候変動への適応策が対策の柱の1つとして掲げられました。それらの具体策としては、気候変動の影響を勘案した安全で災害に強い街づくり、インフラ整備の促進や、気候変動の影響を勘案した経済、自然資源の保護などが掲げられています。欧米各国が、気候変動に対する適応策への重要性を認識し、その対策へと舵を切り始めていることは明らかです。

企業経営の観点からは、今後の気候変動の適応策は、リスクマネジメントの1つとして考えなければなりません。海面上昇・災害増加による工場・店舗の被害といった直接的影響と、原料調達(質・価格)への影響、物流網への影響等の間接的影響のリスクを特定し、事前にその影響を軽減・回避するための対策を取ることが必要です。他方、気候変動への適応策に向けて、新たな需要が発生するという点では、その需要を満たす製品・サービスを提供する企業にとっては大きなビジネスチャンスともなりえます。例えば、干ばつが増えれば干ばつに強い農作物の開発や、ゲリラ豪雨が増えれば、それをより迅速に伝える警報システムの開発などが新しいビジネスとなるというわけです。世界銀行(2010)によれば、2010年から2050年の間に、気候変動の適応にかかる経済的コストは毎年、700億ドルから1,000億ドル程度かかるとされています。ビジネスチャンスという視点で、気候変動の適応策と自社の強みとの関係性を見直し、イノベーションに取組むことが、今後の新たな需要の獲得につながるのではないでしょうか。

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