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【ESG投資の注目点】公共入札、「CSRも評価」が定着へ

2011年12月01日 ESGリサーチセンター、藤崎博隆


国や地方自治体の公共調達において契約先を選定する際に、企業のCSRの取り組みを評価する動きが少しずつ広がってきた。平成17年度施行の「公共工事の品質確保に関する法律(品確法)」で掲げられた総合評価落札方式では、工事価格に加えて技術面など価格以外の要素を総合的に評価し落札者を決定する。もともとは談合やダンピングによる工事品質低下を防ぐのが目的だが、価格以外の評価項目として過去の工事実績等の技術評価に加え、「社会的要請への対応」が取り入れられ始めている。

財務省公表の平成22年度調査によると、総合評価落札方式の試行段階も含めた導入率は都道府県では100%、市区町村では前年度比4.2%増の61.7%と漸増傾向にある。「社会的要請への対応」で評価される内容は、災害協定締結実績やボランティア活動実績などの地域貢献、環境マネジメントシステム認証取得実績などの環境配慮が中心だが、地域の雇用に関する項目やワークライフバランスに関する項目など地域における重点項目を評価に取り入れる自治体もある。

東京都は2011年6月に、以前から評価項目に挙げられていた災害協定の締結、ISO14001の認証取得実績に加えて、都が緑化の取り組みを評価する「緑の大賞」の受賞実績、障がい者雇用実績、「東京ワークライフバランス認定企業」の実績の3点を追加した。また、青森県、宮城県、福島県の東日本大震災の被災自治体では、震災後の雇用対策として被災者雇用実績を評価項目に加えている。これら地域特有の政策課題を評価することで企業の取り組みを促進することが、総合評価落札方式のメリットの一つともなっている。

このような制度は公共工事に限られたものではない。平成19年に施行された「環境配慮契約法(グリーン契約法)」では、公共機関における自動車の調達、電気の供給、建築物の設計などの入札において環境性能評価を取り入れることを位置付け、国や一部の自治体で導入されている。また、建物の清掃、警備などの業務委託の入札に総合評価落札方式を取り入れている自治体も山口県など一部で見られるようになっている。

もちろん、入札制度でCSRを評価しようとすることについては、事務負担が増えるという声はある。現状ではこれらの制度が広く一般化しているとは言えず、業績への影響が出ていると考えられるのは建設業など一部業種に限られている。

しかし、欧州などでは公共入札におけるCSR評価が既に大きな政策テーマに掲げられている。また、民間企業間ではサプライヤーの取り組みを評価し、契約における優位性に反映させるCSR調達は一般化してきている。わが国においても公共入札におけるCSR評価の取り組みが進展していくことが、「社会的責任を果たす企業」=「持続的成長を実現する企業」という構図をより鮮明にしていくのだと言えるだろう。


*この原稿は2011年11月に金融情報ベンダーのQUICKに配信したものです。
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