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認知症施策のあり方に関する調査研究事業

2024年04月22日 紀伊信之、森下宏樹、高橋光進、田上はるか、岩附愛子、渡邉りさ子、内山智香子


*本事業は、令和5年度老人保健事業推進費等補助金 老人保健健康増進等事業として実施したものです。

1.事業の背景・目的
 本事業は、「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」(以下「認知症基本法」と記載)の成立および国における認知症施策推進基本計画の策定、自治体における認知症施策推進計画の策定を見据えて、今後の認知症施策のあり方を提言としてとりまとめることを目的として行った。とりわけ、認知症施策推進基本計画におけるKPI/目標設定の考え方を整理するとともに、認知症基本法に掲げられた基本的施策のうち、「認知症の人に関する国民の理解の増進等」「認知症の人の生活におけるバリアフリー化の推進」「認知症の人の社会参加の機会の確保等」「認知症の人の意思決定の支援及び権利利益の保護」「保健医療サービス及び福祉サービスの提供体制の整備等」のうちの市町村施策、「相談体制の整備等」について、実態調査を行うとともに、総合的に検討を行った。

2.事業の概要
 有識者や認知症の本人・家族等から構成される検討委員会およびワーキンググループを設置・運営しつつ、認知症施策推進基本計画の策定を見据えて、認知症基本法の基本的施策ごとの重要課題・論点の整理や、KPI/目標設定における考え方等を議論、整理した。また、この検討に関連する本人、家族、専門職、企業へのアンケート調査、市町村へのヒアリングを行った。

3.事業の成果
 本事業では、認知症基本法の基本的施策の分野ごとの課題や論点、重視すべき考え方等を整理した。また、基本計画策定における目標設定について、以下のような考え方について整理・提言を行った。
 ・国レベルの基本計画では、基本法の「基本理念」を参照しつつ、「本人の主観」を盛り込むことも念頭に目標を検討すべき。
 ・基本計画の策定にあたっては、これに沿って都道府県計画・市町村計画が策定されること、個々の自治体によって資源の状況も本人や家族等がおかれた状況も異なることも踏まえ、各地域の多様性も十分考慮すべき。
 ・ゴールや目標設定にあたっては、認知症施策を行うために必要な地域での人材等の「資源」の状況等も考慮した上で検討を進めていくべき。
 ・目標と目標達成のための指標(KPI)はその意図されるところが異なる。KPIはあくまで状態を把握するための指標である。これらは明確に分けて検討すべき。
 ・KPIの数が多すぎると、個々の指標達成が目的化してしまうこと、施策全体を概観する際に視野が狭くなること等により全体の施策の推進を阻害する可能性もある。KPIは鍵だと思われるものを厳選して整理すべき。
 ・計画づくり・KPIづくり等が目的化してしまわないよう、実施可能・進捗可能な事項をKPIとすべき。

4.今後の課題
 今後は認知症基本法の規定に基づき、認知症施策推進本部や認知症施策推進関係者会議において、基本計画の策定に向けた議論が行われる。その際には本事業で整理した、基本計画における目標設定の考え方および目標の進捗状況の確認のための仕組みの考え方、また法の基本的施策分野ごとの主な論点・課題や計画検討の前提となる考え方を鑑みた検討が行われることが望まれる。また、認知症施策については自治体単位での取り組みも極めて重要であり、それぞれの自治体における認知症施策推進計画の策定に対する指針等を整理し、発信していくことが必要である。


※本調査研究事業の詳細につきましては、下記の報告書本文をご参照ください。
報告書

【本件に関するお問い合わせ】
リサーチ・コンサルティング部門 プリンシパル 紀伊信之
E-mail:kii.nobuyuki@jri.co.jp
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