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【ライフスタイル系のスマートフォンアプリの実態と取り組むべき施策(中編)】
-独自調査から見えてきた実態と改善ポイント-
アンケート結果から見えたライフスタイル系スマートフォンアプリの実態

2023年01月25日 渡部稜


はじめに
 企業によるスマートフォンアプリ(以下、アプリ)がユーザー側の利用をうまく促進できていないケースが多いという問題認識の下、日本総合研究所では特にライフスタイル系のアプリ(※1)に着目した独自のアンケート調査を実施した。今回は3部構成のコラムとしてアンケート調査結果、また調査結果を踏まえた企業によるアプリの改善に対する示唆を発信する。中編となる本稿では、日本総合研究所が実施したアンケート調査の結果から、前編で挙げたライフスタイル系アプリの問題点について明らかになったユーザーの実態を説明する。

アンケート調査実施概要
 アンケート調査は以下の要領で実施した。



アンケート結果からみるユーザーの実態
 前編ではアプリを提供する企業側の主な誤認として以下の4点を指摘した。
 I.アプリは機能が豊富であればあるほど、ユーザーは利用する。
 II.優れた自社アプリを構築すれば、自社の商品やサービスを購入する。
 III.個人属性や趣味趣向などさまざまな観点で分析することは有効である。
 IV.自社のアプリ内で利用可能な独自ポイントを発行すると、ユーザーの囲い込みができる。
 今回のアンケート調査でわかったユーザーの実態は上記の企業の誤認を明白にするものであった。

 図2はアプリをインストールしたが使用までに至らなかった理由を示したものである。回答率が高いほど多くのユーザーに当てはまる理由であると読み取ることができる。なお、理由は複数回答のため割合の合計は100%にならない。



 「使用するまでに個人情報など登録する項目が多いから」という理由が特に回答率が高く、回答者の過半数が回答している。また次点で「個人情報など求められている情報を登録したくないから」という理由の回答が多く、以上から自身の個人情報を提供することが面倒、もしくは抵抗があると考えているユーザーが一定数存在することがわかる。そのため、4点の誤認のうちの「III. 個人属性や趣味趣向などさまざまな観点で分析することは有効である。」といった企業側の思惑は、あくまでアプリの提供者側の都合であり、必要以上の個人情報などの取得はユーザーにとってアプリの使用を妨げる障壁になり得るということを企業は改めて認識する必要がある。
 また、「アプリからスマートフォンのさまざまな権限の許可を求められるから」という理由が上位に来ていることから、4点の誤認のうちの「Ⅰ.アプリは機能が豊富であればあるほど、ユーザーは利用する。」といった認識にも注意が必要である。アプリにさまざまな機能を搭載し、ユーザーに使用してもらうためにはユーザーによる権限の許可は必須で、この権限の許可こそがアプリ使用のネックとなっていることは企業にとって悩ましい点であると考えられる。

 続いて、図3のライフスタイル系アプリを日常的に利用している理由、また図4のライフスタイル系アプリで商品を買わない、サービスを契約しない理由を示す。なお、複数回答のため、割合の合計は100%にならない。




 アプリを日常的に利用している理由として最も回答率が高かったのは「ポイントを貯めるため」という理由であり、この結果から少なくともアプリの利用を促す方策としてポイントは効果があると考えられる。その意味では4点の誤認のうちの「IV. 自社のアプリ内で利用可能な独自ポイントを発行すると、ユーザーの囲い込みができる。」という企業の考えはある程度正しいようにみえる。しかし、アプリで商品を買わない、サービスを契約しない理由として、「商品情報は見るが、買うアプリ(楽天市場、Amazonなどの総合ショッピング系アプリ)は決まっているから」、「他のアプリで貯めたポイントが使えないから」の2つの理由が比較的高い回答率を得ていることを踏まえると、独自ポイントによってユーザーの囲い込みができるかはやはり疑問が残る。総合ショッピング系アプリとライフスタイル系アプリは併用されていることが多く、そのためポイントも特定の企業に限定される独自ポイントよりは楽天ポイント、Tポイントのような共通ポイントが好まれると考えられるからである。
 また、アプリで商品を買わない、サービスを契約しない理由として、「商品情報は見るが、買うアプリ(楽天市場、Amazonなどの総合ショッピング系アプリ)は決まっているから」という理由が最も回答率が高い結果から、商品やサービスの検討と実際の購入などは必ずしも直結しておらず、サービス利用や購入は別ルートで行うユーザーが多いこともわかる。そのため、4点の誤認のうちの「II. 優れた自社アプリを構築すれば、自社の商品やサービスを購入する。」とは限らないと言えるのではないか。
 以上のようにアンケート調査からはアプリを提供する企業にとっては悩ましいユーザーの実態が明らかとなった。後編では前編、そしてこの中編で論じた問題点に対して実際に企業が取り組むべき施策を述べていく。
 なお、紙面の都合により割愛したが、今回のアンケート調査では上記で記載した以外にもさまざまな観点から調査を行っている。その結果は添付の資料に整理しているため、ぜひご一読いただきたい。

アンケート調査分析結果

(※1) ライフスタイル系アプリとはユーザーが日常的に使用する、交通系(電車・バスなどの交通系企業が提供するアプリ)、生活インフラ系(ガス・電気などの生活インフラ系企業が提供するアプリ)、自治体系(自治体が提供するアプリ)、買い物系(百貨店、ショッピングモール、スーパー、ホームセンター、アパレルブランドなどが提供するアプリ)、独自ポイント系(Tポイント等の共通ポイントではなく、特定の企業の商品・サービスにのみ使用できるポイントに関するアプリ)などを今回の対象とした。
以上

※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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