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未来洞察と長期経営ビジョン策定(上)

2018年07月31日 時吉康範


■創業○○年に向けて長期経営ビジョン策定ブームを迎えるわが国の大手企業

 ここ数年、長期経営ビジョン策定の相談を大企業の方々から受ける頻度が明らかに上がってきた。その理由を考察してみたところ、1)創設年の節目、2)企業業績の回復、3)方法としての未来、の3点に至った。

1)創設年の節目
 わが国の上場企業3626社の約半数は1910~1950年に設立している。2000年頃に持株会社化して設立年が表面上は新しくなった上場企業を含むとさらにその比率は上がる。
 つまり、「会社設立100周年」を迎える大企業が今後30年にわたって登場し続けていくのである。彼らの中には100周年記念イベントや100周年記念動画のような過去を振り返る企画ばかりでなく、多くの割合で100周年の間尺に合う長い時間軸(次の30年、50年、100年等)の長期経営ビジョン策定の検討を始めている。

2)業績の回復
 内閣府の平成25年度年次経済財政報告によれば、2008年のリーマンショックから5年後の2013年に景気は持ち直したとされる。わが国の多くの大企業の業績は2013~2015年にリーマンショック前の水準に回復し、その後、中期経営計画の期間である3~5年を「巡行」した。
 そして現在、次期中期経営計画策定にあたって、2030年や2050年あたりの長期的な時間軸での、経営リスクにプロアクティブに備える活動や長期的な事業機会を捉えた既存事業の延長線上にはない事業の創造を志向する大企業が増えてきた。

3)方法としての未来
 上述のような「長期経営ビジョンの策定」「長期経営リスクへの備え」「長期事業機会と事業創造」の“方法”として注目され始めたのが「未来」である。
 単なる恣意的な予言や感想のようなものを含め、未来予測や未来洞察に関する書籍、講演・セミナー、コンサルティングサービス等の紹介が溢れてきたのもここ数年の話である。

■長期経営ビジョンの構成

 長期経営ビジョンは、独立した文章やフレーズではなく、複数の要素からなるストーリーである。経営ビジョンというと企業のありたい・あるべき姿を表す「定性的な文章:定性ビジョン」ばかりに目が向けられがちである。確かに、定性ビジョンは長期経営ビジョンのヘッドメッセージとなるので重要には違いないが、あくまでも一つの構成要素に過ぎないことを強く認識しておくべきである。

長期経営ビジョンの構成要素


出所:日本総研作成


■長期経営ビジョン策定のポイント

 長期経営ビジョンは複数の要素からなるストーリーと記した通り、策定のポイントの一つは「ストーリー性」にある。
 経営理念から行動指針に至るまで各要素が漏れなく書かれていて、かつ、各要素に記載している内容を読み進めた際に論理的なストーリーであることが望ましい。
このポイントが重要な理由は、長期経営ビジョンと中期経営計画の連動性を確保するためである。長期経営ビジョンは長期的 経営目標であり、中期経営計画は長期的経営目標を達成するための短期的・中期的な具体的施策の計画と中間過程としての定量目標が記されるべきである。
 出来の悪い長期経営ビジョンは、そのビジョンの中にストーリー性がなく、この結果、当然のことながら中期経営計画と連動していない。これでは長期経営ビジョンを策定する意味すらない。

 後半では、長期経営ビジョンにストーリー性を持たせるにはどうすればよいか、を述べる。

以上



※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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