コンサルティングサービス
経営コラム
経済・政策レポート
会社情報

経営コラム

コラム「研究員のココロ」

地方自治体における人事管理制度改革の現状

2007年11月05日 石川洋一


 公務員制度改革を背景に、人事管理制度の見直しが自治体で始められて既に数年経過している。起点は平成13年末の公務員制度改革大綱にあるが、地方分権改革や公務員給与制度改革も並行して行われており、自治体職員にとって、長らく続いてきた基盤が大きく変化し変更される状況に入った。
 特に、一般市民と具体的に日々接する市レベルの自治体職員にとっては、現実としての少子高齢化への対応や、市民の意識・行政ニーズの変化、市民との協働促進、行財政の変化・改革、職員採用抑制があり、仕事への取組意識や方法を見直さざるを得ない。このような状況下で、市としての人事管理制度(今の所は評価制度が主体)の改革を進めていくわけだが、長年に渡り培われた職員自身の意識・思考・行動や組織風土に直接かかわる話だけに簡単に進む話ではない。

 人事管理制度改革推進の支援やアドバイスをする立場にある側から見ると、様々な様相が見えてくる。
 例えば、ある程度大きな市の間でも、公務員制度改革大綱の前後に直ぐに改革着手に取り組んだところもあれば、実質的に、これから着手するというところがある。また、人事評価制度改革を契機に職員の活性化や能力向上を本格的に狙っているところもあれば、単に制度変更という形式や表面部分を弄くるに留めるところもある。改革着地点を制度導入として既に概ね終わったとするところもあるが、制度導入はあくまでも出発点であり、制度運用を重ね高度な人事管理・内部管理を構築したいとするところもある。
 改革担当者ベースでいえば、自治体の人事管理制度改革例のスタンダードを作りたいと意識し具体的に動いている担当者も居れば、どこかの市の評価表の切り貼りで済まそうとする方もいる。担当者は改革を進めようとしているのに、かならずしも気がのらない上席者が居る例もある。

 自治体の仕事は全国共通の側面も強いが、人事管理制度改革については、受け止めていく方針、対応着手の時期、推進展開方法、スピード、内部での意思集約の巧拙等で、自治体間で格差がつき始めているのではないか。民間企業のように、業界内で売上げ・利益といった目に見える形での華々しい競合・競争はないが、人事管理制度改革という共通の大きな方向と課題に対し、各自治体は実際に競い合っているのであり、スピードや内容は、前述したように今後格差がついてくるのであろう。
 確かに首長次第という面もあるが、それだけで決まるのではない。自治体職員は中央や上から言われたことを、ただ事務的に粛々とこなしていくという意識・行動が長らくあったが、ここにきて、自分達の組織を、自分達の力・責任で、地道に改革・改善していきたいという主体が新たに生まれつつあるのではないか。
 自体職員の意識・能力の向上と具体的行動の裏打ちがなければ、またそれを促進・補強する人事管理制度が従前のような脆弱な状態であれば、自治体機能は有効に働かない。自治体及び自治体職員に対し常にチェックを怠らないことも重要であろうが、組織内部から改革・改善を推進する主体・担当者が育つことも、最終的には市民の利益につながるはずだ。
経営コラム
経営コラム一覧
オピニオン
日本総研ニュースレター
先端技術リサーチ
カテゴリー別

業務別

産業別


YouTube

レポートに関する
お問い合わせ