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地球温暖化は「経営リスク・課題」なのだろうか

2008年07月22日 三木優


 洞爺湖サミットでは地球温暖化が主要な議題となり、企業がCMにてCO2削減や再生可能エネルギー導入をアピールするなど、地球温暖化は、近年における最も大きな「環境問題」になった感がある。しかし、企業との意見交換を進めていくと、現場レベルでの危機感は強いものの、地球温暖化は「経営リスク・課題」にはなっていないように感じる。この温度差の原因はどこにあるのだろうか。

 地球温暖化より前から存在している「環境問題」としては、大気汚染・廃棄物・土壌汚染などが挙げられる。これらの諸問題と地球温暖化の違いはいくつかあるが、企業サイドから見た場合の違いとしては、強力な法律により規制されているか・いないか、という点がある。

 環境問題には、多くの場合「積極的に対応しなければならない理由」が存在しないため、ハーディンが提唱した「共有地の悲劇」が発生する。「共有地」を適正に使用させるために、大気汚染には大気汚染防止法、廃棄物には廃棄物の処理及び清掃に関する法律、土壌汚染には土壌汚染対策法が定められ、これらの規制により「共有地」へのオープンアクセスが阻害されると、企業においてもやっと「経営リスク・課題」として認識されることとなる。

 これまでの環境問題が経営リスク・課題になっていた経緯をふまえると地球温暖化についても、義務的排出権取引制度のような強力な規制措置がなければ、経営リスク・課題として認識されないのだろうか。私は、現場レベルでの危機感を「適切なカタチ」で経営層にまで伝えることが出来れば、強力な規制が始まる前にその企業における経営リスク・課題とすることが可能であると考えている。

 「適切なカタチ」とは、企業ごとに異なっているが、基本的な考え方としては、「その企業において最も大切だと思っていることや主要な事業ドメインに地球温暖化がどのように影響するのか定性・定量的に説明する」ことである。人も企業もインセンティブが無ければ動かないのは一緒である。地球温暖化を経営リスク・課題とするインセンティブをどのよう与えていくのか、考え抜くためのフレームワークを日本総研では研究しており、その成果を活かしたコンサルティングを実施している。地球温暖化が経営リスク・課題として認識されない「ギャップ」を埋めていくアプローチに、今のところは正解は存在しないが、問題意識を持ったお客様との仕事を通じて、「正解」を探していきたいと考えている。
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