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コラム「研究員のココロ」

海外に広がる「道の駅」

2006年09月11日 金子 和夫


 国内のむらおこしやまちづくりが海外で評価され、地方自治体が国際協力に取り組むようになってきた。現在、大分県の「一村一品運動」がタイ政府で取り組まれている。また、高知県馬路村の「ゆず」のむらおこしが、タイ語に翻訳・紹介されている。さらに、「道の駅」がアジアやアフリカで取り組まれている。わが国のむらおこしやまちづくりの手法が、海外の地域振興に貢献していることは、わが国における地方の役割・存在意義を考える上で大きなポイントとなる。
 そこで、7月にタイ北部のチェンマイ市を中心に、タイにおける一村一品運動、道の駅などの取り組みについて視察してきた。

●タイにおける一村一品運動の取り組み

 タイのチェンマイ周辺の農村部に行くと、集落の中に、特産品加工所が整備されて、農民がグループを形成して、農産物加工品(菓子、調味料など)や工芸品(木工品、家具、銀細工など)を作っている。農民は水田だけでなく、果樹園、特産品加工を組み合わせて、むらづくりに取り組んでいる。これらの特産品は、道の駅、都市のショッピングセンター、空港のOTOP(One Tambon One Prduct:一村一品)ショップで販売されている。OTOPの商品は、伝統的な工芸品だけでなく、現代的なデザインやセンスの商品も多く、イタリアの展示会に参加するまでに至った村も出るなど、そのバラエティと質の高さに驚かされる。
 タイ政府は97年の新憲法制定から、予算配分も含め急速に地方分権を推進し、地域振興策として、大分県の一村一品運動を参考としたタイ版の一村一品運動(OTOP:One Tambon One Prduct)を強力に展開している。もともと一村一品運動は大分県で25年以上も前に始まった地域振興策である。この運動は、地域の資源や特性を最大限に活用した特産品開発と地域ブランドの確立に取り組む運動であり、所得の向上と雇用創出、さらには住民の誇りと愛着の醸成に大きく貢献してきた。この大分県の一村一品運動がタイでさかんに取り組まれているのである。

●国際協力銀行が産業村の建設を支援

 タイの工業省産業振興局(DIP)は、全国20村を対象に手工芸品の生産・販売促進と周辺観光地との連携を図ることで地域住民の所得向上を目指す「観光促進のための産業村開発事業」を実施している。各村でコミュニティセンターを建設し、ここで工芸品の生産・販売促進、周辺観光地との連携を図ることを目的としており、この活動の場となるコミュニティセンター建設を国際協力銀行(JBIC)が円借款で支援してきた。
 しかし、コミュニティセンターが完成-し、村はセンター運営委員会を立ち上げて開業したが、村全体の振興にどのように結びつけるかが課題となった。 そこで、JBICは、日本の道の駅の経験、ノウハウが参考になると考え、道の駅実施者の知見を紹介し、運営改善のアドバイスを行うこととなった。

●日本の道の駅のノウハウを紹介

 日本の道の駅は、1991年10月から実験的に始まって以来、全国的に数を増やし続け、2006年8月現在では845ヶ所が登録されている。もともと過疎や高齢化に悩む地方自治体、特に中山間地域の人々に地域活性化のモデルとして受け入れられた。道の駅は、休憩、情報発信、地域の交流機能を持った、地域とともに作る個性豊かなにぎわいの場として位置づけられている。特に、農産物や付加価値を付けた加工品の販売、農村レストランなどを通じて、地域の収入増加と、高齢者や女性を中心とした雇用の場を確保している。
 2003年に、愛媛県内子町と千葉県富浦町の「道の駅」関係者がワークショップにアドバイザーとして参加し、それぞれの経験をタイ側参加者に紹介し意見交換を行った。内子町の野田文子氏(直売所運営協議会会長)が「道の駅によって私が変わり、私の生き方が変わり、町が変った」と発言すると、会場から大きな拍手が沸き起こったそうである。
 ワークショップを通じて産業村センターの関係者の意識は、「製品の展示・販売」、「近隣観光地の情報提供」としての機能から、「村の伝統・文化の拠点」、「後継者の人材育成」、「関係機関との連絡・調整の場」としての機能に拡大していった。ワークショップ内で企画されたアクションプラン案はいくつか実行され、ある村は集客、伝統文化の継承と住民参加の促進に取り組んでいたり、自然染めを特産品とする村は、綿織物を特産品とする村から生地を仕入れるようになったりと、産業村間のネットワークも構築されつつある。

●タイとわが国との展開の違い

 タイの一村一品運動と道の駅が、国際観光市場に向けた取り組みであるのに対して、わが国の取り組みは、地域内の地産地消の取り組み、または、都市と農村の交流であることが大きな違いである。
 わが国は、自家用車を利用した日常生活圏の広がりやレジャー行動が見られ、郊外の幹線道路沿いの道の駅で日常的に生鮮野菜を購入する姿が見られる。しかし、タイでは、住民の自家用車を利用したドライブなどのレジャー行動は市場が限られており、顧客は国際観光客または都市住民とされている。
 わが国の道の駅では、特産品のレベルアップが課題となっており、タイから国際的に通用する観光土産品の商品開発に学ぶ点が多いと思われる。タイは、これからモータリゼーションが進展するとともに、都市と農村が連携していく中で、周辺住民向け生鮮野菜などの生産と販売の仕組みについて学ぶ点があると思われる。

●地方から地方へ協力が広がる

 都市と農村の経済格差の問題は、わが国もタイも同様である。わが国の地方の優れた試みが、アジアの地方の人々を勇気づけることは、国内の地方にとっても、地方の価値や存在意義を再確認することにつながる。
一村一品運動や道の駅のアドバイスは、「地域が主体となって、地域の資源を発掘・再評価して、地域づくりに取り組む」という、まちづくりやむらおこしの精神そのものであった。
 地域で生活して地域を振興する実体験を有する者同士の、国を超えた交流・支援が始まろうとしている。
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