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中国天津の次世代都市開発

2017年09月26日 井熊均


 久しぶりに、中国の天津生態城を訪問しました。天津生態城は200を超えると言われる中国のスマートシティの標準モデルとして建設された国家プロジェクトです。われわれは、2012年、日本企業と共に再生可能エネルギーとエネルギーマネジメントシステムをふんだんに取り込んだマイクログリッドプロジェクトを計画し、経産省の支援の下、国家発展改革委員会、国家能源局、国家電網、と日中の特別なプロジェクトとして進めることを合意しました。しかし、それからわずか2カ月後に尖閣列島問題が発生し、中国側との会合ができなくなってしまったのです。

 プロジェクトが頓挫してから2年後、今から3年前に、天津生態城を訪問しました。その時は、中国の不動産市場の停滞もあり、開発が途中で止まり、中国を代表するエコシティとして輝きは失われてしまったのかもしれないと思いました。
 しかし、今回の訪問では3年前のイメージが吹き飛びました。開発が始まった頃に植樹された木々は青々と茂り、汚染されていた池は満々と水を湛える湖となって都市内に中水を供給し、ごみの真空輸送も始まっていました。域内には3つのテーマパークができて年間300万人を超える来訪者を集め、土日は渋滞が起きホテルも満室になるといいます。通勤時間には浜海地区につながる橋が渋滞します。アメリカのLEEDに倣ったとされる省エネ基準に基づいて建てられたマンションには、生態城や浜海地区で働く人8万人の住民が住み、販売すればあっと言う間に完売するということです。

 われわれのプロジェクトの頓挫、不動産市場の鈍化、天津港地区での爆発事故などを得ても天津生態城が方向性を失わなかったのは、環境面だけでなく、生活環境を含む20を超える指標を立て、世界中から先進的な技術や制度を取り入れる努力を怠らなかったからです。次世代に向けた都市開発に挑む中国政府の意気込みと中国市場の底の深さを感じる想いでした。新たな想いを抱き、我々はここで新しいプロジェクトにチャレンジします。


※メッセージは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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