=====≪quote≫ 角川HGは2月から米国で「リング」などグループが所有する映画作品をインターネットで有料配信する。米情報技術ベンチャーの「P2P」技術を利用した最新のファイル交換ソフトを活用し、最大200作品を届ける。まずP2Pが普及している米国でコンテンツ(情報の内容)配信ビジネスを軌道に乗せ、日本でも映画の2次利用の新市場を開拓する。 (出所)日経産業新聞(2007年1月31日) =====≪unquote≫
≪評≫浅川秀之〔研究員〕 (新保修正・加筆) この記事には通信・メディア分野の観点から、2つのポイントがあるのではないかと思う。
①IP技術をベースとしたリッチコンテンツ配信サービスの進展が著しい ②先端技術分野では機能性だけを訴求するのではなく、社会や環境におよぼす影響を当初から考慮することも重要
1点目は「通信と放送の融合」という話題にも関係する。 2点目は、P2Pという技術についてである。最近Winny開発者に対して有罪判決が下された。争点の1つに“著作権法違反行為を助長するために開発したのか否か”という点があろうが、確かに技術的には著作権の侵害を助長する可能性が高いともとらえられる。しかしながら角川HGが事業を展開しようとしているように、ネットワークの負荷を軽減することが可能なコンテンツ配信技術としては、利用者にとって機能性・利便性の高い有望な技術である。技術とその社会へおよぼす影響の問題として、古くはロバート・オッペンハイマー(原爆の父)のケースが有名である。世界的に見ても情報通信技術分野では先端的であるといわれる日本であるが、今後はさらに技術が社会におよぼす影響を無視しえない状況になっていくと考えられる。特に情報通信技術の場合、生活インフラとしての意味合いが強いこともあり、その社会的な影響を軽視することはもはやできないであろう。 |