国際戦略研究所 田中均「考」
【毎日新聞・政治プレミア】日本の政治は深刻な危機にある
2025年10月15日 田中均・日本総合研究所国際戦略研究所特別顧問
日本の政治は公明党の自民党との連立体制からの離脱により誰が首相に指名されるか不透明な状況となっている。自民党が他党との連立にたどりつき高市早苗総裁が首相に指名されることになるのか、主要野党の連携が成立し政権交代となるのか、それとも連立は成立せず、高市総裁が少数与党のまま首相に指名されるのか。このような情勢を首相指名選挙における数の問題と捉えるだけでなく、今日の日本政治が持つ深刻な欠陥に光を当てることが何より重要だ。
自民党総裁選による右派の巻き返し
自民党総裁選と新執行部選出過程はまぎれもなく永田町的権力闘争だった。候補者は自らの主張を包み隠し幅広い支持を得ようとし、結局、議員は派閥のボスの指示に従い投票するという旧態依然とした選挙戦だった。今日の情勢に最も適した総裁を選ぼうということではなく、石破茂総裁選出後、権力中枢から離れていた人々が権力を取り戻したということだろう。思想的にも安倍晋三元首相の後継と捉えられた高市氏をはじめ、石破前総裁を嫌った麻生太郎氏、「政治とカネ」の問題で権力の外に押し出された旧安倍派の人々など基本的には党内右派の人々がカムバックした。自民党は右から左まで幅広い思想傾向の人々を包含する百貨店のようなものと言われたが、従来は派閥間の競争でバランスがとられ、一つの傾向に染まることはなかった。しかし「政治とカネ」の中核にあった旧安倍派や旧二階派が疎外され、同時に先の参議院選挙で自民党右派層が参政党や国民民主党に流れたといわれ、自民党右派の人々が総裁選挙で高市氏を押し上げ、執行部を右派で固めた。保守中道の路線は右派に取って代わられたということなのだろう。このような永田町政治の再来に本来中道リベラルである公明党にとっては大いなる違和感があったのだろう。
なぜ連立がかほど困難なのか
トランプ革命による国際関係の激変や公的債務膨張、労働生産性の低下、インフレが続く日本経済など日本を取り巻く内外情勢は危機的であり、政権の安定が一義的に重要だ。一刻も早く少数与党体制を解消し、安定的な連立政権を誕生させることが必須だ。本来大連立が最も好ましいが、大連立はおろか小連立も遅々として動かない。
...............
続きは、毎日新聞「政治プレミア」ホームページにてご覧いただけます。
https://mainichi.jp/premier/politics/articles/20251015/pol/00m/010/005000c