国際戦略研究所 田中均「考」
【毎日新聞・政治プレミア】ポスト安倍に望む ―「忖度」「やってる感」から「結果達成」へ
2020年09月09日 田中均・日本総合研究所国際戦略研究所理事長
安倍政権は幕を閉じ、今⽉半ばには⾃⺠党総裁選を経て新しい⾸相が誕⽣する。安倍⾸相は累次の選挙で⽀持を得て、7年8カ⽉という憲政史上最⻑の政権を維持したわけで、⽇本の政治経済の安定に⼤きな役割を果たした。⼀⽅で、その安倍政権を引き継ぐ新しい政権が取り組まなければならない困難な課題も⼭積している。
新型コロナウイルス感染拡⼤防⽌と経済回復、経済財政運営の中⻑期的な対策、11⽉の⼤統領選挙後の⽶国政権への向き合い⽅、厳しさを加える⽶中対⽴への処し⽅、そして東京オリンピック・パラリンピック開催是非の判断など節目にきた重要課題は多い。これら課題はいずれも国⺠の幅広い理解がなければ進まない基本的な問題だ。新政権には、コロナ危機を通じ浮き彫りになった⻑期政権の弊害とでも⾔うべき幾つかの問題点をしっかりと認識し、乗り越え、政治への信頼を取り戻してほしいと思う。
指導者への国⺠の信頼の回復
危機にあって何よりも重要だと思うのは、政治指導者が国⺠に信頼されていることだ。コロナ危機で最も評価されている世界の指導者の⼀⼈としてドイツのメルケル⾸相があげられているが、メルケル⾸相はコロナ感染防⽌のために⾃粛を求める際、⾃らの⾔葉で時間の制約なく国⺠に語り掛けた。指導者の信頼度は、特定の危機において⾃ら信じていることを⾃らの⾔葉で語り国⺠を説得することによって⾼まる。
統治には国⺠が喜ぶことも国⺠に負担を強いることもいろいろある。統治は国⺠に歓迎されることだけを目指すわけではない。重要であるのは、国⺠に負担を強いなければいけないときに、確信をもって説明責任を果たすことができるかどうかだ。
安倍政権がコロナ対策で⼗分な国⺠の信頼を得ることができなかったのは、今から考えれば持病の悪化で記者会⾒などの時間が⼗分とれなかったこともあろうが、例えばマスク配布、PCR検査の実施、Go To トラベル事業の前倒しなどについて国⺠を納得させる合理的な説明がなかったことに起因する。コロナ対策以外でも森友・加計、桜を⾒る会、東京⾼検検事⻑定年延⻑問題などについても説明責任の不⼗分さが露呈し、それが故に⾸相の信頼度は著しく損なわれた。
説明責任が果たされず過ぎてしまうのは⼗分な批判勢⼒が存在しないこともあるのだろう。国会、政党、メディア、有識者も強い政権に迎合するのではなく、権⼒が傲慢とならないようないよう監視の目を光らせていかなければならない。
「どこで、何を、誰が」決めているのかの「⾒える化」を
コロナ対処でこれからますます求められるのは意思決定過程の透明化だ。これまでのコロナ対処を⾒ると菅義偉菅官房⻑官、⻄村康稔経済再⽣担当相、加藤勝信厚⽣労働相、そして専門家会議など果たしてどこで意思決定が⾏われているのか明確でないし、⼀貫しない発信が⾏われてきたような気がする。そして時には「官邸官僚」と⾔われる⾸相側近や補佐官の助⾔により進められた政策もあったと伝えられる。…
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