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国際戦略研究所 田中均「考」

【毎日新聞・政治プレミア】コロナ危機で問われる指導者の資質

2020年04月28日 田中均・日本総合研究所国際戦略研究所理事長


 危機には指導者の資質が問われる。特に国民の生命財産を直撃するような事態において政治指導者が優れていることは国民にとって大いなる幸せだ。もちろん国民が危機に耐えうる力があることこそが、もっと本質的な問題だとは思うが、国民を動かす力も含めて政治指導者の役割は大きい。おそらく近代日本が経験し、日本の運命を決定づけた重大な危機として挙げられるのは、1853年の黒船来航を端緒とする明治維新と1941年の真珠湾攻撃から4年続いた太平洋戦争だったのだろう。明治の元勲たちは見事に明治維新を成就し、太平洋戦争においては、これを止める力はなく、惨めな敗戦に終わった。第二次世界大戦後の重大な危機においては、国際社会、特に米国とともに行動する場合がほとんどで、日本は受け身で危機に対処する場合が多かった。おそらく2011年の東日本大震災・東京電力福島第1原発事故を除けば、今日の新型コロナウイルス・パンデミックは日本の力で向き合わなければならない重大危機だ。

危機において政治指導者の支持率は上がる
 世論調査は政治指導者の資質を表すものではないが、危機において国民にどう支持されているのかは一つの大きな参考材料となる。危機においては通常、指導者の下に結束しようとする力が働き、支持率は上がるものだ。現に厳しいパンデミック危機を迎えた欧州の指導者の支持率は軒並み上昇した。4月上旬の時点での欧州の主要国の支持率の上昇ぶりは次の通りだ。
 伊コンテ首相71%(危機前から27ポイント上昇)、オーストリア・クルツ首相77%(33ポイント上昇)、オランダ・ルッテ首相75%(30ポイント上昇)、デンマーク・フレデリクセン首相79%(40ポイント上昇)、仏マクロン大統領51%(15ポイント上昇)、独メルケル首相79%(11ポイント上昇)
 この傾向への顕著な例外は米国のトランプ大統領と日本の安倍晋三首相だ。両者とも危機の前から支持率の大きな変動はない。トランプ大統領については当初新型コロナウイルスの脅威を過小評価し、その後も大統領選に利用しているという批判が根強い。しかし就任以来の40%を超える支持率は大きく変化がない。これは米国社会の分断が深く、トランプ大統領の岩盤支持層が固いことを示しているのだろう。安倍首相についても唐突な学校休業要請やマスク問題、さらには緊急事態宣言が遅れたことなどについて批判は強い。しかし数%下降はしたが引き続き40%前後の支持率を維持しているのは、保守、若年層の支持が揺るがないことを意味しているのか。本来危機にあって支持率が大幅に上昇しても不思議ではないことを考えれば、トランプ大統領についても安倍首相についても危機での指導力が評価されているわけではないとは言えるのかもしれない。…

続きは、毎日新聞「政治プレミア」ホームページにてご覧いただけます。
https://mainichi.jp/premier/politics/articles/20200424/pol/00m/010/018000c
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