国際戦略研究所 田中均「考」
【毎日新聞・政治プレミア】「世界の秩序を大きく揺さぶる」トランプ米大統領の統治
2025年02月13日 田中均・日本総合研究所国際戦略研究所特別顧問
先日の石破茂首相とトランプ米大統領の日米首脳会談は日米関係の基調を設定する良い首脳会談と言える。しかし、今後、2国間、多国間の種々の問題に日本が向き合っていくうえで、トランプ氏の統治リスクをしっかりと見極める必要があるのだろう。
統治の根幹は人材であり、政治指導者が政策実現のためにどういう人材を求めるかだ。トランプ氏は1期目の失敗が閣僚や補佐官が従順ではなかったことに起因すると考えたのか、1期目とは異なるアプローチで人事を行っている。それは、いわゆる政治任用のポストだけではなく、非政治任用の官僚にも及んでいる。
人事の基準は政策を実現するための知見や能力ではなく、トランプ氏に忠実かどうか、あるいはトランプ氏に無批判に従うかどうか、を基準にするものだ。
これは日本でも安倍―菅政権の時代に内閣人事局を通じて実践された考え方に似通ったものだが、その結果生じた「忖度(そんたく)」が不規則的な事態を生んだのは多くの識者が指摘しているとおりだ。
ただ、日本の場合は、それでも各省庁から能力ベースで推挙された官僚から、官邸が「忠誠度」をベースに選択する人事であり、知見・能力がまったく考慮されないわけではない。しかし忠誠度が高いと思われる人材を高い職に選択することにより、官僚全般に「政策能力・実績よりも官邸に従順である方がメリットになる」と思わせる効果が大きかったと言えるだろう。
トランプ人事の場合はどちらかと言うと「忠誠度」を絶対的基準とし、政策能力や実績は重要な要素ではないようだ。トランプ氏はこれまでとは違う統治の形を追求しようとしているようだ。伝統的な行政のプロセスでは自分の大統領職はまっとうできないと考え、そのプロセスを変えようとしているようだ。これがトランプ政権のリスクであり、米国内では民主主義的統治機構が破壊されていくと憂慮されている理由だ。
従来とは異なる「政府」を形作ろうとしている
トランプ政権は4000人の政治任用だけではなく300万人と見積もられる非政治任用官僚も「忠誠度」を基準に罷免あるいは任用しようとしている。
また実業家イーロン・マスク氏は「政府効率化省」(DOGE)のトップを引き受けるにあたって約7兆ドルの連邦政府予算を2兆ドル削減し、公務員を大幅にリストラすると述べている。そして、その作業に政府の業務を熟知しない民間のIT関係者を動員しているようだ。
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