国際戦略研究所 田中均「考」
【毎日新聞・政治プレミア】激動する内外情勢 必要な「安定した強い大連立政権」
2025年01月28日 田中均・日本総合研究所国際戦略研究所特別顧問
日本を取り巻く内外の環境は大きく変わりつつあり、今これに取り組んでいかないと間違いなく手遅れとなる。リベラルな国際秩序は中露などの台頭と国際法を無視した行動により崩壊しつつあり、米国をはじめ多くの民主主義国でも伝統的な政党の統治体制は崩れた。
もはや、先進民主主義国の協調だけでは安定的な秩序は保てない。ましてや米国でトランプ大統領が就任し、アメリカ第一主義に基づき「アメリカを再び偉大にする(MAGA)」という。
トランプ大統領の就任演説では国際社会との協調は感じられず、アメリカは世界のリーダーとして振る舞うことをやめたようだ。現に就任直後、トランプ大統領は、気候変動問題に関する「パリ協定」や「世界保健機関(WHO)」からの離脱を決めた。
日本でも旧来の「永田町的政治」は崩れつつある。裏金問題や旧統一教会問題を徹底的に解明することなく、ご都合主義的に乗り切ろうとした結果、自民党は先の総選挙で大敗を喫した。自民党は永田町的政治のイメージを払拭(ふっしょく)して、これからの選挙で党勢を挽回することもかなうまい。政権交代が行われていれば異なるシナリオもあり得たのだろうが、政権基盤が著しく弱まった中で自民党の統治体制が継続した。
少数与党の下での自民党統治を維持することに精いっぱいで、少子高齢化、労働生産性の低下、公的債務の著しい増大といった日本経済を衰退に追い込む根幹的問題について真摯(しんし)に向き合おうともしない。
自国の利益を前面に国際社会の中で指導者の地位を失いつつある米国に依存していく日本外交の体質を変えるエネルギーもない。
このままだと日本は坂道を転がり落ちるように加速度的に衰退していく。その趨勢(すうせい)にストップをかけるためにはどうすべきかを問うのが本稿の目的である。
選挙制度を含め政治のインフラを作り直すとか、教育を抜本的に強化するといった根源的な問題に取り組むべきではあるが、今はその時間はない。まずは既存の制度の中でできることに集中せざるを得ない。
政治を安定化させるため大連立に向かうべきだ
第一に必要なのは政治を安定化させることだ。少なくとも現在の少数与党政治には早急に終止符が打たれなければならない。国会で内閣不信任動議が成立しうる状態で思い切った政策を追求できるはずもない。
政党間の競争により政策が形成されていくこと自体は良いことであるが、いつ内閣が崩壊するかわからないような政治を長く続けるべきではない。
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