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国際戦略研究所 田中均「考」

【毎日新聞・政治プレミア】米国、韓国、日本は民主主義の危機を克服できるか

2024年12月11日 田中均・日本総合研究所国際戦略研究所特別顧問


 大統領選でトランプ氏が勝利したのは米国民の選択の結果だが、選挙が終わった今、もっとも懸念されているのはトランプ政権下で民主主義的機構が壊され、民主主義的手続きが無視されていくのではないかという点だ。

 韓国では尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が軍事独裁体制の遺物としかみられない戒厳令を発令し、6時間で撤回された。政治的困難を強制力で打開しようという民主主義の否定そのものだ。

 日本の自民党は過半数を大きく割り込み、予算を通すためには衆院に28人の議席しかない国民民主党と部分的に協力するいびつな統治体制となっている。統治に責任を持たない少数政党の要求を受け入れるのは民主主義的原則に悖(もと)ると言えるのではないか。

 このような3カ国での民主主義的政治の停滞は地政学リスクとなり、国際情勢に大きな影響を与える。

米国の民主主義機構と手続きは維持されるか
 米大統領選を決定づけたのは「インフレや不法移民がもたらす生活の危機」に誰が効果的に対処してくれるのか、という点だったのだと思う。それに対処できるのはバイデン政権の延長であるカマラ・ハリス副大統領よりトランプ前大統領だと選択したのだろう。その結果、トランプ氏は選挙人数だけではなく一般投票でも圧倒し、共和党は上下両院の多数を制し、最高裁も保守的色彩が強いこととなり、盤石の政治基盤を得たと言える。

 トランプ2.0は第1期よりはるかに「トランプ流」を押し通す政権となるだろう。トランプ次期大統領の閣僚やホワイトハウス要職への指名を見ていると、その職に関連する知見や経験とは程遠く、「トランプへの忠誠心」を軸とした選択であり、近親者を重職に据えるなど、民主主義体制ではおよそ常識的とは言い難い人事だ。トランプ氏はイーロン・マスク氏を政府効率化省のトップに指名した。既成の権力構造を大幅に変えることを目指しているのではないか。

 さらに2021年1月の議会乱入事件で刑に服している人たちの恩赦や自己に関する4件の刑事訴追を引き下げること、さらに訴追に関係した人々への報復なども示唆している。

 どこまでが選挙キャンペーンのレトリックなのか、述べたことを本気で追求していこうとしているのかは定かではないが、「法の支配」といった米国の民主主義の核心をなす考え方や、人種や性別、国籍での差別や偏見をなくす「ポリティカルコレクトネス」が損なわれていくのではないかという懸念を持つ人も多い。いずれにせよ次の中間選挙までの2年間で米国の民主主義の行方が定まっていくのだろう。

韓国は戒厳令騒ぎを克服して民主的統治を回復できるか

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続きは、毎日新聞「政治プレミア」ホームページにてご覧いただけます。
https://mainichi.jp/premier/politics/田中均/

 
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