国際戦略研究所 田中均「考」
【毎日新聞・政治プレミア】日本と米国 国民の選択は政治をどう変えるか
2024年11月13日 田中均・日本総合研究所国際戦略研究所特別顧問
日本では10月27日に衆院選が、米国では11月5日に大統領選が行われた。衆院選の結果、裏金問題に象徴された自民党政治に対して国民は厳しい審判を下し、自民党は50議席以上失い、単独過半数を大きく割り込んだ。公明党と合わせた連立与党も過半数を下回った。
米国では大接戦の予想に反し、トランプ前大統領は選挙人数で過半数の270を大きく超え、一般投票でもカマラ・ハリス副大統領を圧する結果となった。同時に行われた議会選挙においても上院で共和党は過半数に達し、下院でも有利な戦いを進め、トリプルレッド(共和党が大統領と上下両院を制する)を獲得する勢いだ。
日米に共通する旧来秩序への不信・不満
日米に共通するのは既存の秩序への積もり積もった不信・不満だ。日本では2012年に自民党が政権に回帰して以降、圧倒的多数を持つ自民党の数に依存した政治が続いた。
「安倍官邸1強」といわれた統治体制のなかで、官僚や政治家だけではなくメディアなども含めたそんたくが不透明な政治を生んだ。いわゆる「モリ・カケ・サクラ」問題や検察人事への介入、さらには旧統一教会との癒着、裏金問題などの事実関係が徹底的に究明されることはなかった。
アベノミクスや対ロシア、対北朝鮮外交などの検証が行われることもなかった。その間コロナ禍やインフレが国民生活を圧迫した。
長年言われてきた政治資金の透明化も中途半端に終わり、派閥の解消が言われたものの長老政治は続き、「説明せず、説得せず、責任をとらず」の3S政治であり続けた。自民党内では、非公認の自民党議員の所属する政党支部に2000万円の政治資金を提供した「2000万円問題」をはじめ、党執行部への批判が強いと伝えられるが、国民の批判は個々の問題というより、長く続く自民党の永田町的政治そのものに向けられたことを認識すべきだ。
米国において、2回の弾劾訴追を受け、4件の刑事裁判の被告人であり、選挙キャンペーンでも人種差別的な発言を繰り返したトランプ氏がなぜ勝利し、大統領職に復帰することになるのか。
インフレと移民問題が国民の生活を圧迫していることが現職には不利であることが大きな要因であったことは論をまたない。
ただ、その背景には、既存の秩序に対する深刻な不満が従来型政治家とはかけ離れたトランプ氏を利したこともあろう。バイデン大統領は上院議員、副大統領、大統領として生涯体制内で生き続けた人であり、ハリス氏も検事としてキャリアを培ってきた人だ。
エリートが構築してきた政治経済秩序の下で、貧富の格差は拡大し、リベラルな考え方の下で増大した移民に職を奪われるのではないか、もう20年後には白人はマイノリティーになるという恐怖感が、4年の大統領職以外一切の公的役割を有してこなかったトランプ氏支持の国民の選択につながったのだろう。
「米国は変わるが日本は何も変わらない」のか?
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