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国際戦略研究所 田中均「考」

【毎日新聞・政治プレミア】「台湾有事」と軽々に言うなかれ 日本は壊滅的打撃を受ける

2024年06月12日 田中均・日本総合研究所国際戦略研究所特別顧問


 日本に駐在する呉江浩・中国大使が台湾問題は中国の核心的利益であり、日本が分断に加担すれば「日本の民衆が火の中に連れ込まれることになる」と発言した。

 このような日本に対する威嚇的発言は、日本に駐在する外交官として常軌を逸しており、大使としての信頼を失った。
 
 ただ台湾問題を巡っては、日本の政治家やメディアが「台湾有事は日本有事」と繰り返すことにも大きな問題がある。
 
 台湾周辺で有事的事態になれば日本に甚大な被害を与えることは想像に難くないが、「日本有事」と言いきることは日米安全保障条約5条事態で日本が攻撃にさらされ、日米が共同行動をとるという事態を指すわけで、戦争に入ることを意味する。
 
 これはどうしても避けなければいけない事態であり、国民の生命財産を守る立場にある政治家が軽々しく口にできる言葉ではない。
  
 おそらくいくつかの目的で発せられている言葉なのだろう。第一には中国へのけん制であり、同時に民主主義体制である台湾に寄り添う気持ちの表れなのだろう。とりわけ知台派の人たちの発言にかいま見られる。しかし台湾の人々の多数は現状維持を望んでいるわけであり、台湾海峡での戦争を好むわけがない。
 
 また、中国に対するけん制として意味をなすためには日本が米国とともに戦うという大前提がなければならないが、中国が台湾統一のために武力行使をする場合に米国が必ず軍事介入をすると思うのはあまりに短絡的だ。

  
 第二には日本の防衛力の飛躍的拡充を果たすための世論づくりという面 が強い。岸田文雄首相の「今日のウクライナは明日の東アジア」発言に始まり、2027年までに防衛費を国内総生産(GDP)比2%に引き上げる決定に至ったわけであり、軍事、軍事の威勢のよい発言が市民権を得る結果となった。台湾有事は日本の命運を決する重大事であり、もう少し冷静、客観的に考えてみる必要があるのだろう。

中国は台湾統一に走るのだろうか
  
 習近平総書記の掲げる「中国の夢」は中華人民共和国創建100年の2049年までに社会主義を維持したまま米国に並ぶ豊かな強国となるとともに、国土を統一するという概念を含むものだ。
 
 習氏は慣例を破り3期目に入っているが、3期目が終わる27年が一つの節目とも言われる。中国は27年ごろまでに周辺で米台との関係で軍事的優位を確立すると予測する軍事専門家も多い。

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続きは、毎日新聞「政治プレミア」ホームページにてご覧いただけます。
https://mainichi.jp/premier/politics/田中均/
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