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国際戦略研究所 田中均「考」

【毎日新聞・政治プレミア】朝鮮半島情勢の大局

2023年09月26日 田中均・日本総合研究所国際戦略研究所特別顧問


 2002年9月17日に小泉純一郎首相が訪朝し、日朝平壌宣言を発表し、拉致被害者5人が帰国してはや21年となる。その後、拉致問題は十分な進展を見せず、朝鮮半島情勢も紆余(うよ)曲折はあったが、南北関係も緊張が続き、北朝鮮はミサイルの実験を繰り返し、核兵器の実用化にまい進しているように見える。ここにきて金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記がロシアを訪問し、プーチン大統領との首脳会談が行われ、露朝関係が大きく進展した様相を見せている。拉致問題は早急に解決しなければならない人道問題であり、小泉訪朝以降、日本の関心は拉致問題に絞られているのは理由あってのことである。岸田文雄首相が早急な首脳会談のために首相直属の高官協議を呼び掛ける背景は理解できる。しかし、日清、日露の戦争は朝鮮半島の権益を巡ってのものであったし、日本が朝鮮を植民地化し、大陸に支配を拡大し日中戦争に至った歴史を見ても、朝鮮半島は日本の外交や安全保障の原点である。この大局を見失ってはならない。

朝鮮半島の地政学は大きく変わりつつある
 今日、朝鮮半島を巡る地政学は大きく変化した。韓国における尹錫悦(ユン・ソンニョル)保守政権の成立により文在寅(ムン・ジェイン)前政権の対北朝鮮融和主義は是正された。対話の道は閉ざさないが、米国との核抑止を含む安全保障体制を強化し、日本との関係を改善し、日米韓の連携の下に「力には力」で備える姿勢が明確となった。南北間の対話は新型コロナウイルス感染拡大もあり、完全に閉ざされたままで、南北間の経済協力も長く停止されたままである。北朝鮮は最近になり「同一民族」という側面を強調する従来の姿勢から、大韓民国という韓国の正式呼称で呼びかけるに至り、これは民族統一を前提としない国家と国家の関係を考え始めたのではないかとの観測もある。頻繁に繰り返すミサイル実験も日米韓を意識し東に向けて発射されることが多くなったとの見方もされる。
 米国の戦略観も大きく変わった。…

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https://mainichi.jp/premier/politics/田中均/
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