国際戦略研究所 田中均「考」
【毎日新聞・政治プレミア】自民党政治の終わりは近い?
2022年10月13日 田中均・日本総合研究所国際戦略研究所理事長
7月末からおよそ2カ月間、私は腹部大動脈瘤(りゅう)感染除去・バイパス手術のため東京慈恵会医科大学付属病院に入院し、20時間に及ばんとする手術と10日間にわたる集中治療室での治療を含め文字通り「死線をさまよって」いた。幸い友人で血管外科の世界的名医、大木隆生教授が私の主治医で、全力で向き合ってくれたおかげで手術は成功し回復の途上にある。この間、内外情勢に大きな変化があった。特に、7月8日の安倍晋三元首相襲撃事件から今日に至る日本の政治状況には深刻な懸念を持たざるを得ない。冷戦後の自民党政治も終焉(しゅうえん)に入りつつあると見るべきなのかもしれない。
「信なくば立たず」
要するに「信なくば立たず」である。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)を巡る問題でも岸田文雄首相や自民党指導部の言は国民を納得させるには程遠い。大方の国民には、やはり自民党と旧統一教会の関係は深く、特に岸信介元首相から安倍元首相に至る系譜の中で相当深い持ちつ持たれつの関係があったのではないか、それが露呈することは自民党にとって著しく不都合であり、とにかく早く蓋(ふた)をすることに躍起となっているのではないか、と映る。細田博之衆院議長は三権の長である。煮え切らない態度をとることにより細田氏個人の問題とともに、衆院議長の権威がおとしめられていくことに責任を感じるべきなのだろう。細田氏は、自民党は圧倒的勢力であり、自身がかつて領袖(りょうしゅう)を務めた安倍派は引き続き権力の中枢にあり続け、野党やメディアがどう言おうと最低限の説明で逃げ切れる、そのうち事件は風化していくであろうと考えているのかもしれない。説明にならない説明を繰り返し、多くの事実が後追いとなっていく山際大志郎経済再生担当相も自分を辞めさせるのは首相の任命責任に直結し、政権の安定性を損なうと考えているのだろう。いずれも近年培われてきた「安倍1強体制」の根底をなした数の力が何よりも強いということか。
旧統一教会問題の本質
しかし、形の上では「安倍1強体制」は終わりを告げ、岸田氏が政権をとり、選挙でも勝利したわけで、国民は従来とは違う路線を期待していたのかもしれない。ただ、岸田氏は新たな政策アプローチよりも政権の安定的保持に関心があるようで、そのためには安倍路線継承が得策と感じているようである。その中で旧統一教会問題は政権の足を引っ張り続けるだろう。今日日本は一刻も早く、円安、過剰財政負担、コロナ禍からの経済再建などの待ったなしの課題に取り組む必要があるにもかかわらず、である。問題の本質はこれまで旧統一教会に何らかの政治的配慮がされてきたのではないか、これをごまかさず明確にし、将来の関係を断つべしということなのだろう。信教の自由との関係で宗教法人法上の認証取り消しは難しいと指摘されているが…
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