国際戦略研究所 田中均「考」
【読売新聞】インタビュー記事「沖縄復帰50年特集 基地負担見直し 正面から」
2022年05月13日 田中均・日本総合研究所国際戦略研究所理事長
日本を取り巻く安全保障環境が悪化する中、沖縄、全国とも日米安全保障条約や沖縄の米軍基地などへの理解が広がっているようだ。
沖縄に過重な基地負担があるという意識は、沖縄だけでなく、全国でも非常に高い結果だった。米軍基地の整理・縮小は進んでいるが、いまだに国内の米軍専用施設の約7割が沖縄に集中するという不公平感が出た結果だろう。
また、政府と沖縄の関係について、沖縄の人の約8割が「よくない」「どちらかといえばよくない」と回答していた。今回の調査では、沖縄の基地負担の軽減、政府と沖縄の関係改善の必要性が浮き彫りになったのではないか。
自衛隊への理解が進んでいることも特筆すべきことだ。太平洋戦争末期の凄惨な地上戦を経験した沖縄では、自衛隊は決して歓迎される存在ではなかったからだ。災害派遣など様々な努力を自衛隊が積み上げた結果だ。
一方、日本周辺では、中国の軍事力が急速に拡大し、北朝鮮のミサイル能力は格段に向上した。ウクライナ侵攻では、ロシアがなりふり構わずに軍事力を行使しており、北海道の体制強化も課題となった。
日米安保の重要性が増す中、米軍基地が果たす役割は大きくなっている。それだけに沖縄の基地負担を放置してはならず、真正面から見直さないといけない。負担軽減の議論は、国内だけで進めるのではなく、米国の同盟国である豪州や韓国なども含めた大きな枠組みで協議するべきだろう。
(5月13日(金)読売新聞東京朝刊に掲載)