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国際戦略研究所田中均「考」

国際戦略研究所 研究員レポート

【中国情勢月報】中国にとってのウクライナ問題とは

2022年04月25日 副理事長 高橋邦夫


 2月24日にロシアが国際社会の願いを無視して、隣国ウクライナに侵攻してから、2カ月余が経った。プーチン露大統領の当初の思惑とは異なり、ウクライナ側は国際世論を味方につけ、米国・NATO諸国からの様々な支援を得て、予想以上に善戦し、ロシア軍は首都キーウ(キエフ)周辺から撤退せざるを得なくなった。但し、両国が直ちに停戦に合意する可能性はなお低く、ロシアはウクライナ東部への攻撃を強めている。他方、ロシア軍が撤退したキーウ近郊の街、 ブチャなどでは多数の一般市民が殺害されているのが発見されるという痛ましい事実も明らかになっている。
 こうしたロシアのウクライナ侵攻に対して、ロシア・ウクライナ双方とこれまで良好な関係を築いてきた中国はどのような対応を取っているのであろうか。また、その背景にある中国の考え方は、どのようなものであろうか。更に、今回のウクライナ侵攻は、今後の中国外交にどのような影響をあたえるのであろうか。
 今回は、主に中国側の発表振り・報道振りを元に、これらの問題について考えてみたい。

1.中国にとってのロシア・ウクライナが持つ意味
これらの問題を考えるに先立って、ロシアのウクライナ侵攻が始まる前の中国・ロシア関係と中国・ウクライナ関係について見てみよう。

 (1)中国・ロシア関係
 ロシアに関しては、例えば昨年12月15日に行われた習近平国家主席とプーチン大統領とのオンラインでの会談を見ると、習近平主席が「これは2013年以来我々の37回目の会談ですね」と述べ、また「貴大統領は多くの場面で、中露関係を“21世紀の国家間の協力のモデル”と言っておられますね」とプーチン大統領のそれまでの発言を引用して述べていることが如実に示しているように、極めて緊密な関係を維持してきている。これは、以前から共に米国を中心に欧米諸国や日本と厳しい関係が続く両国にとって、緊密な関係にあることを互いに誇示することは、政治的に大きな意味があるからであろう。
 経済面でも、2021年の中露貿易の実績を見ると、中国からロシアへの輸出は約676億米ドル(対前年比33.6%増)、ロシアからの輸入は約784億米ドル(同37.2%増)と大幅に伸びた(中国の貿易総額に占める割合は、約2%)。また、上記のオンラインでの首脳会談に続いて、北京冬季オリンピック開幕式に合わせてプーチン大統領が訪中した際に対面で行われた2月4日の首脳会談後、ロシア側は、プーチン大統領が今後中露間の貿易額を2024年までに2000億米ドルに拡大するための工程表を両国が承認したと述べたと発表している。また、2月4日に中国外交部が発表したプーチン大統領訪中時に中露間で署名された計15件の合意文書の中に石油・天燃ガスの売買に関する文書も3件含まれており、恐らくは、そうした天燃資源のロシアからの輸入を拡大することを中心に、今後も両国間の貿易は拡大していくことが見込まれる。
 なお、こうした政治面・経済面、更には近年接近ぶりが目立つ軍事面での協力から、中露は同盟関係にあるのではないかとの見方もあるが、筆者はこれまでの中国側の研究者との意見交換をも踏まえれば、少なくとも中国の側は、ロシアとの関係を中国の利益のために活用するとの極めて冷静かつ現実的な観点で見ていると考えている。

(1)中国・ウクライナ関係
 では、中国とウクライナとの関係はどうであろうか。昨年2021年の中国とウクライナの貿易額を見ると、中国からウクライナへの輸出は約94億米ドル(対前年比36.8%増)、ウクライナからの輸入は約98億米ドル(同25.2%増)と過去最高になったが、昨年の中国の貿易総額約6兆514億米ドルに占める割合は、約0.3%と極めてわずかである。
しかし…

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【中国情勢月報】中国にとってのウクライナ問題とは(PDF:715KB)

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