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国際戦略研究所 田中均「考」

【毎日新聞・政治プレミア】ウクライナ問題を解決できるのか 国際秩序は崩れゆくのか

2022年03月09日 田中均・日本総合研究所国際戦略研究所理事長


 ロシアのウクライナ侵攻は国際秩序に深刻な打撃を与えた。国連安保理の常任理事国であり核保有国のロシアが19万の兵⼒をもってウクライナに侵攻した。これは武⼒による侵略であり、明々⽩々、国際法に違反する⾏為だ。ロシアを唯⼀⽌められる⼒を持ち、秩序を維持するうえで「世界の警察官」の役割を果たしてきた⽶国は、ロシアがウクライナを侵略する確かな情報を持ちながら、⽌めることは出来なかった。またプーチン⼤統領は、核をちらつかせつつ北⼤⻄洋条約機構(NATO)をけん制し、作戦を遂⾏しようとしている。NATOはウクライナ上空の⾶⾏禁⽌ゾーン設置について「ロシアと直接交戦する危険があるから」とウクライナの要請を断ったと伝えられる。⽶国やNATOが直接戦闘に参加すれば、第三次世界⼤戦になってしまうとの恐れは誰しも持つところだ。NATO諸国はウクライナに武器の供給を続け、ウクライナに対して間接的に⽀援をし、国際社会は「かつてない強⼒な経済制裁」でロシアにプレッシャーを与えようとしている。
 しかしどんな強⼒な経済制裁を実施しようとも、キエフが陥落し、ウクライナの主要都市もロシアの⼿に落ちるのは時間の問題なのだろう。犠牲をこれ以上⼤きくしないよう停戦を実現し、政治的解決を図らなければいけないが、その責任はロシアとNATOにある。ロシアのウクライナ侵略と、これを⽌められなかったこと⾃体が今後の国際秩序を考えるうえで重⼤な意味を持つし、政治的解決が図られない場合には、既存の国際秩序は崩壊の危機にひんすることになる。

⽶国の国際秩序維持の主導的役割はもう望めないか
 これまでの⾏動を⾒ると⽶国は、第⼆次⼤戦後に作られた体制を守ることが⽶国⾃⾝の利益であるとして、平時に欧州及びアジアに相当な兵⼒を前⽅展開し、秩序を破ろうとする国に対する抑⽌⼒を維持してきた。そして秩序が破られた時、⽶国は軍事的に⾏動した。冷戦構造が固まりつつある時期の朝鮮戦争やベトナム戦争は社会主義陣営の拡張を⽌める戦争と⾒られたが、冷戦終了後の⽶国の戦争は普遍的価値に基づく国際秩序を護るための戦争であった。イラクのクウェート侵略を押し戻すための湾岸戦争、911後のテロとの戦いを標ぼうしたアフガニスタン戦争、⼤量破壊兵器の拡散を防⽌するとしたイラク戦争などは同盟国との集団的⾃衛措置という⾯はあるが、どちらかというと普遍的価値に基づく秩序維持の戦争だった。…

続きは、毎日新聞「政治プレミア」ホームページにてご覧いただけます。
https://mainichi.jp/premier/politics/田中均/
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