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国際戦略研究所 田中均「考」

【毎日新聞・政治プレミア】日韓関係を打開できるのは政治の力だけだ

2022年02月09日 田中均・日本総合研究所国際戦略研究所理事長


 ⽇韓関係は「国交正常化後最悪」と⾔われる。なぜそうなのかを客観的に分析し、原因を認識することなくして関係改善に⾄ることはない。徴⽤⼯問題とか慰安婦問題、あるいは輸出管理厳格化といった個々の問題に目が⾏きがちだが、個々の問題の解決だけでは⼀時的に⼩康状態をもたらすことはできても、すぐに関係が悪化するのは目に⾒えている。私は1987年に外務省の担当課⻑(北東アジア課⻑)になり、2005年に退官するまで、政治・安全保障・経済のあらゆる⾯で直接、間接に朝鮮半島問題に携わってきた。退官後も今⽇に⾄るまで、⽇韓両国の有識者による「⽇韓フォーラム」のメンバーであり、計35年の⻑きにわたり韓国との関係を考えてきた。
 ⽇韓関係がここまで悪化したのは、歴史認識、国⺠意識、政治姿勢の相違という三つの要因があるからだ。これらに正⾯から向き合い、中⻑期的な国益を考えて乗り越えない限り、いつまでたっても堂々巡りとなるのだろう。正常化のプロセスから今⽇に⾄るまで、このような困難を乗り越えるのに⼤きな役割を果たした政治家がいた。1965年の⽇韓基本条約を実質的にまとめた⼤平正芳⾸相(当時外相)と⾦鍾泌(キム・ジョンピル)⾸相(当時中央情報部⻑)、そして98年⽇韓共同宣⾔を締結した⼩渕恵三⾸相(当時)と⾦⼤中(キム・デジュン)⼤統領(当時)だ。これらの政治家は⽇本と韓国の未来を⾒、未来の利益のために局⾯を変えようとした。これまでもそうであったが、⽇韓関係は政治家にしか変えられない。⼤平⾸相と同じ宏池会の岸⽥⽂雄⾸相が本年3⽉の韓国⼤統領選挙で選ばれる新⼤統領とともに、⽇韓関係を阻害する三つの要因がもたらす困難を乗り越える⼒を発揮することが期待されている。

歴史認識が違うことを理解しよう
 韓国は戦前の歴史を⾒、⽇本は戦後の歴史を⾒る。韓国が戦後の歴史、⽇本が戦前の歴史を⾒ることに、ちゅうちょしてはならない。
 豊⾂秀吉は2度にわたり朝鮮出兵を⾏った。その当時から⽇韓併合に⾄るまで⽇本の野望は朝鮮半島を⽀配下におさめ、中国に進出することだった。⽇清戦争も朝鮮半島の権益をとるための戦争であり、⽇露戦争は朝鮮半島での⽇本の影響⼒拡⼤に抗するロシアとの戦争だった。いろいろ説はあるが、⽇清戦争直後にロシアと通じた李王朝⾼宗の王妃である閔妃(ミンピ)暗殺事件は⽇本側により企図されたものだったという。また、ハルビン駅で伊藤博⽂(内閣総理⼤⾂を4次にわたり務め、後、初代朝鮮総督を務めた)が暗殺され(暗殺犯・安重根は韓国では英雄とたたえられている)、その後⽇本は⽇韓併合に⾛り、朝鮮半島の直接⽀配に踏み切った。この間、数百年にわたり朝鮮は戦場となり、他⺠族による植⺠地⽀配にさらされたわけであり、多くの犠牲を強いられたことに憤怒の情があることを理解しなければならない。…

続きは、毎日新聞「政治プレミア」ホームページにてご覧いただけます。
https://mainichi.jp/premier/politics/田中均/
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