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国際戦略研究所 田中均「考」

【毎日新聞・政治プレミア】日本の参院選、米国の中間選挙、中国の共産党大会-米中の決定的対立の序曲?

2022年01月13日 田中均・日本総合研究所国際戦略研究所理事長


 本年は国内政治が国際秩序を⼤きく揺さぶる年となりそうだ。⽇本では夏に参院選、⽶国では秋に中間選挙、そして中国でも秋に5年ぶりの共産党⼤会が開催される。いずれも現政権が政権の浮沈をかけて挑む図式となり、新型コロナウイルス感染の収束を図ることができるか、経済回復にどれだけ確かな⾒通しを持つことができるか、が重⼤な要因となるのだろう。ただ、⽇⽶中の3国とも社会の⽭盾や政治の構造的変化が加速されてきており、コロナ収束に相当な時間がかかる環境下で、そのような国内情勢変化を背景として⽶国・⽇本対中国の対⽴が決定的となる可能性があるのではないか。

中国の共産党統治と市場経済の⽭盾が深刻となる
 中国の統治が⼤きな曲がり角にある時期の共産党⼤会開催だ。鄧⼩平の改⾰開放路線の下で対外的には低姿勢を保ちつつ、市場経済を導⼊し、世界貿易機関(WTO)に加⼊しグローバリゼーションの恩恵を受け、10%を超える成⻑を実現してきた時代は終わった。⽇本を追い越し第2の経済⼤国となった2010年以降中国の対外姿勢は「戦狼(せんろう)外交」と⾔われるほどに攻撃的となり、「⼀帯⼀路」を掲げて影響⼒を拡⼤し、国内的には「中国の夢」として中華⼈⺠共和国成⽴100周年の49年までに⽶国と肩を並べる国⼒を持つ国となるとする。同時に揺るぎなき共産党統治を目指し、監視社会の徹底などを通じて国内の引き締めを強化してきた。しかし、その中国は今⽇幾つかの⽭盾を露呈しつつある。
 第⼀には社会主義と市場経済の⽭盾だ。市場経済が進んでいけば「中進国の罠(わな)」といわれるように労働コストの上昇により輸出は頭打ちとなり、経済成⻑は鈍化する。所得格差も拡⼤する。習近平政権は内需と外需の「双循環」を唱え、内需重視を図ってきているが、成⻑率は年々下降する。さらに「共同富裕」の促進を唱え、アリババなどの巨⼤IT企業からの巨額な資本提供を求めるとともに独占禁⽌法の下で巨額の罰⾦を科し、格差是正の原資とするとともに、共産党による巨⼤企業管理の梃⼦(てこ)としている。しかし⾃由度を失った企業や⼟地バブルの崩壊など、経済成⻑の阻害要因は増える。統治の正統性を経済成⻑に求めてきた共産党にとってみれば経済成⻑の鈍化は危機的要因だ。
 第⼆には国内的引き締めの成否だ。国⺠が豊かになるに従い⾃由を求める⼒は強まろうが、果たして⾃由を束縛する国内引き締めは成功するのだろうか。⾹港における⺠主化を求める勢いを⽌められないと⾒た中国は国家安全維持法を⾹港に導⼊し、事実上「1国2制度」に終⽌符を打った。⾹港の⺠主化が本⼟中国に影響を与えることを危惧したのだろう。これから経済成⻑率が鈍化し、所得格差などに対する国⺠の不満が顕在化するに伴い、共産党の強制⼒を使った締め付けはますます強くなっていくのだろう。…

続きは、毎日新聞「政治プレミア」ホームページにてご覧いただけます。
https://mainichi.jp/premier/politics/田中均/
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