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国際戦略研究所 田中均「考」

【毎日新聞・政治プレミア】外交が「毅然とした主張」に取って代わられるわけにはいかない

2021年12月08日 田中均・日本総合研究所国際戦略研究所理事長


 先の総選挙で⾃⺠党が事実上勝利した背景には、⽇本の有権者、特に若い⼈々のあいだでこの10年間、徐々に浸透してきた保守ナショナリズムの⾼まりがあったと⾒るのは間違いだろうか。「毅然(きぜん)とした主張」をすべきだという考え⽅が間違っているわけではないが、毅然とした主張だけでは結果を作ることはできないのは明らかだ。外交の原則とは毅然とした主張をしつつ交渉をし、相⼿との調整のうえでウィンウィンの結果を作るプロセスである。
 筆者の外務省⼊省時、研修の教材として使われていたエピソードを思い出した。およそ90年前のこの⽇(1932年12⽉8⽇)、満州国問題を議論した国際連盟総会で松岡洋右⾸席全権は原稿なしで1時間20分にわたる⼤演説を⾏った。松岡は13歳で渡⽶し苦学してオレゴン⼤学を卒業した⼤変な英語の使い⼿だった。松岡が受けていた訓令は「⽇本の主張が認められなければ国際連盟脱退はやむを得ない」というものだったと伝えられる。翌33年3⽉の連盟理事会でリットン報告書をベースとした勧告が採択されると、松岡は勧告反対を明らかにし、席を⽴って退場し、その後⽇本は連盟脱退に⾄る。この松岡の毅然とした態度が⽇本国内で熱狂的に歓迎され、ポピュリズムにあおられた無謀な戦争へとつながっていったのは歴史が⽰す通りだ。松岡はその後、満鉄総裁や外相になり、戦後はA級戦犯で訴追され判決前に病死したが、まさに戦争に⾄る過程の当事者として何を思っただろうか。

「毅然とした態度」は目に付くが、本来あるべき「外交」はどこへ?
 今⽇、⽇本で「毅然とした態度」はあちこちで目に付くが、結果を作る外交の姿はほとんど目に付かない。韓国との関係では問題を作ったのは韓国だから、解決の提案を持ってくるまでは、意味ある⾸脳会談や外相会談はおろか、在京⼤使とも⼀回たりとも⾯会に応じない姿勢だ。…

続きは、毎日新聞「政治プレミア」ホームページにてご覧いただけます。
https://mainichi.jp/premier/politics/田中均/
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