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第1回:SF-Foresight(Science Fiction × Foresight)の可能性

田中靖記 & SF-Foresightプロジェクト


―――『すばらしい新世界』が描こうとしたのは科学の進歩そのものではなく、科学の進歩が人間に与える影響のことだった。
・・・・オルダス・ハックスリー「すばらしい新世界」(著者による新訳版への前書きより、光文社, 2013)


 多くの企業/組織が、新しい社会の姿、事業の在り方、新しい技術を構想し、実装しようとしている。さまざまな手法や情報を駆使しているものの、現在の社会・制度を前提とした発想では何か新しい発想が生まれづらくなっている。従来の発想では、思考の袋小路に陥ってしまっている。

 日本総研未来デザイン・ラボでは、このような課題を抱えている企業・組織に対して、これまでの視野の外側にある、未来の兆しを示唆する情報を用いて、新たな社会の姿や生活者の行動を洞察する方法(Foresight手法)を提供してきた。個人や組織が持つバイアスを壊し、前提を疑い、思考を新たなステージへと移すための手法である。

 Foresight手法においては、既知の情報を前提としながらも、未知だった多くの情報を探索し、それらの情報を複合的に検討することで、多くの未来を構想する。このプロセスは、SF(Science Fiction)に携わる方々が取る手法と類似している。特に、「社会の前提を疑い・覆す」態度は共通する部分であると感じている。一方で違いもある。Foresight手法においては、SF作家ほど単一の未来について、そのディテールまで描きこむことは通常行わない。多くの未来の可能性の数を出すことに集中しているからだ。

 複雑化する未来社会を構想するうえで、それぞれの社会について人々の息づかいまで描き出し、未来の構想者だけではなくその読者にまで同じ社会を共有することができるSF作家の手法は、新たな発想の構築に悩む企業への福音になるかもしれない。神は細部に宿る、という言葉があるように、細かな社会の、生活の姿を描き出すからこそ生まれる新たな発想がある。

また、SF作家が一つの物語を紡ぎだすにあたって、それ以外の多くの社会の姿も想像しているはずである。その中でひとつの未来を選択し物語化するプロセスは、事業の構想から具現化に至るプロセスそのものであるようにも感じる。

 Foresight手法とSF作家の手法を組み合わせることで、より複合的・伝達可能で意味のある未来社会の構想が、事業や技術アイデアの発想ができるのではないか。そう考えた我々は、多くのSF作品に接し、SF作家の思考方法を理解するあるSF考証家と連絡を取った。


SF作家・考証家|高島雄哉(@7u7a_TAKASHIMA) 作家。東京大学理学部物理学科卒、東京藝術大学美術学部芸術学科卒。2014年、「ランドスケープと夏の定理」で第5回創元SF短編賞受賞(Kindle等で電子書籍化)。同年、「わたしを数える」で第1回星新一賞入選(『折り紙衛星の伝説 年刊日本SF傑作選』所収)。SFマガジンcakes版にて『世界を設定する』、サンライズWebサイト矢立文庫にて『エンタングル:ガール 舞浜南高校映画研究部』を連載。現在は、Webミステリーズ!にて取材エッセイ『想像力のパルタージュ』矢立文庫にて戦争SF『WAR TIME SHOW戦場のエクエス』を連載中。設定考証として、『ゼーガペインADP』『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』『ブルバスター』などを担当。


JRI未来ラボ
最初に日本総研から連絡があったとき、どのような思いを抱きましたか。

高島氏
SFは〈ありうる世界の可能性〉を描き出すために、フィクションの側から接近します。ファクト方向からさまざまな提案をされている日本総研さんからのお声掛けは大変刺激的だと率直に思いました。

JRI未来ラボ
SFとビジネスの関係について、どのように感じておられますか。

高島氏
これまでも──明に暗に、個人でも集団でも──SF的な発想は、ビジネスの現場で活用されてきたと推察します。ロボットはその最たるものです。逆にSFも、可能性を現実化するビジネスの構想力から大きな刺激を受けています。宇宙開発や自動運転はビジネスによって大いに推し進められています。
この影響関係をより活性化することで、さらに新しい可能性が生まれてくる予感があります。

JRI未来ラボ
この協働に、どのような可能性を感じておられますか。

高島氏
今回の協働企画では、まず日本総研の〈未来洞察手法〉を体験する機会をいただきました。特に(1)着目すべき変化を見出す手法は、フィクションの現場でも広く行われています。一方でその後の可能世界を描き出す点では、ファクトとフィクション/ビジネスとSFで、アプローチに大きな違いがあるように感じました。
類似点も相違点も大変刺激的であり、双方の思考パターンの刷新につながっていくと思います。また、言語化されていなかった手法を、明確に理論化するきっかけにもなると考えています。


高島氏と日本総研未来デザイン・ラボは、お互いのこれまでの知識・経験・課題認識を共有しながら、SFとForesightをビジネスに活かしていく方策を探っていくこととした。次回以降、具体的なコラボレーションの目的や方法、その実践についてお伝えしていきたい。

■日本総研 未来デザイン・ラボ SF-Foresight Project
Science FictionとForesight手法を組み合わせることで得られる新たな気づきに可能性を感じ、それらの融合によって社会変革を導くサービスやソリューションを開発しようとする未来デザイン・ラボ内のプロジェクト。
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