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 未来洞察/デザインの手法を実際のプロジェクトに適用する際には、「洞察」プロセスの設計が重要となります。
「洞察」プロセスでは、未来洞察マトリクスと呼ばれるフレームを用い、全ての交点において『強制発想』を行うことで、新たな機会領域の発見、アイデアの導出を試みます(下図参照)。この際、検討の目的(何を見いだしたいのか)や戦略目標の時間軸(何年先を見ているのか)等に基づき、横軸・縦軸それぞれに適切な軸を設定する必要があります。

図1:未来洞察マトリクス

内的環境軸(未来イシュー)の考え方
 横軸には、内的環境、つまり自社もしくは自社の業界・産業に関する項目を設定します。具体的な項目として何を設定するかは、検討の目的に応じて変わります(下図参照)が、自社の分析や業界動向に基づき演繹的に導き出すことが重要です。これは、言い換えれば、蓋然性の高い項目を設定することであり、強制発想で得られる示唆の説得性を担保する一因となります。

図2:内的環境軸(未来イシュー)の例

外的環境軸の考え方
 縦軸には、外的環境、つまり自社の外側に存在する未来に関する項目を設定しますが、「不確実性」と「蓋然性」のどちらを重視したアプローチを取るかにより、設定する項目は大きく異なります(下図参照)。ここで、「不確実性」とは、「起こるか起こらないかが分からない」ことを指しています。既存の延長線上、言い換えれば線形の考え方では見通すことが困難な場合には、不確実性を重視したアプローチが適しています。「蓋然性」とは、「起こることが確からしい」ことを指しており、既存の延長線上、つまり、線形の考え方に基づき見通すことが可能な場合には、蓋然性を重視したアプローチが適しています。

図3:外的環境軸の例

「蓋然性」と「不確実性」のバランス
 では、具体的にどのような場合に、蓋然性を重視したアプローチ/不確実性を重視したアプローチが適しているのでしょうか。
 蓋然性と不確実性のバランスを考えるうえで、まず重要な要素は「自社にとっての時間軸」と「対象とする産業特性」の2つです(下図参照)。

図4:「対象とする産業特性」「自社にとっての時間軸」と蓋然性・不確実性のバランス

 時間軸とは、自社(自組織)や自機関の戦略目標の時間軸の長さ。つまり、何年後の未来像を検討したいのか、何年後の事業シナリオを検討したいのか、何年後に新製品や新事業を上市したいのか、といったようなことを指します。
 一般的には、時間軸が長ければ長いほど既存の延長線上で見通すことが難しくなるため、より不確実性を重視したアプローチが適しています。

 産業特性とは、自社が事業シナリオや新規参入を考える産業の特性のことですが、ここでは特にその製品のライフサイクルの長さの違いに着目します。目まぐるしく新商品が登場し、ごく一部の商品しかロングセラーとして残らない消費財産業と、何十年もかけて一つの発電所や浄水場を完成させ、その後何十年も使われるインフラ産業では考え方の根本が異なるのは容易に想像できるでしょう。
一般的には,製品ライフサイクルが長ければ長いほど確実性が高くなるため、より蓋然性を重視したアプローチが適しています。
 なお、対象産業の自社からの距離感も考慮すべきであり、遠いほどまずは蓋然性が高いほうがよいでしょう。

 これらを組み合わせたものが上図です。
これまで述べたとおり、自社・自組織の戦略目標の時間軸が長ければ長いほど不確実性を重視した、対象産業の製品ライフサイクルが長ければ長いほど蓋然性を重視したアプローチが適していることを表しています。
 例えば、インフラ産業では10年後までの計画は既に立てられていることが多いため、10年後の未来像の策定には蓋然性が高い線形のアプローチが適しています。一方、消費財産業では10年後の消費者の生活がどのように変化しているのか分かりづらいため、未来像の策定には不確実性を重視した非線形のアプローチが適しています。

 なお、45度線上の点線で囲った領域にあたる課題の場合は、これまでの前提を共有したうえで,自社・自組織の状況や対象国・地域に応じたアプローチをとります。

 自社・自組織の状況とは、自社・自組織それぞれの目的、経験の蓄積、問題意識を指します.

 目的とは、大きく分けて、既存事業を想定したシナリオプラニングと新規事業を想定したイノベーションの2つに分けられます.シナリオプラニングでは蓋然性を重視した抜け漏れのない論理構造が求められるでしょうし、イノベーションでは不確実性を重視した非線形のアプローチに基づくアイデアが求められるでしょう。

 経験の蓄積とは、これまでどのような取り組みをどれくらい深く実施してきたかを指します。この点を考慮するのは、これまでの取り組みとの重複を避け、また、これまでとは違ったアプローチをとることでこれまでとは違うアウトプットを出すためです。
 問題意識とは、自社の成長戦略の行き詰まり感や、これまでの情報や発想への限界感、自社の従業員の視野の狭さへの危機感などへの問題意識の高さを示しています。

 これらの状況は企業によって異なるため、個別に対応することが必要です。

 また、対象国・地域に関してですが、簡単に言えば、成長著しい新興国と成長が鈍化し衰退に向かっている先進国では異なるということです。量的不足が課題となることが多い新興国では、量を拡充するための様々な政策が出され、諸外国の企業もこぞって参入していきますので、蓋然性を重視した線形のアプローチが効果的です。
 一方、課題が複雑化している先進国では、これまでの考え方が通じないことも多いため、不確実性を重視した非線形のアプローチが必要となります。

図5:蓋然性・不確実性の判断ポイント

事例紹介
 具体的にどのように軸を設定し、検討を進めていくのかをより具体的にご理解いただくために、これまでにご相談いただいた事例に基づいた例示を行っています。
 詳細は各リンク先をご参照ください。


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