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オピニオン

【シニア】
第8回 ギャップシニアのニーズが見えてきた

2016年04月26日 沢村香苗


 第7回メールマガジンでは、ギャップシニアの日常の観察から生まれる洞察と、ギャップシニア本人を含む多様な専門性を持つメンバーでの協創が商品開発の核であることについてご紹介しました。よく指摘されるように、ギャップシニアのニーズの見えにくさが商品・サービスを供給する側にとっての最も大きな障壁だといえます。ギャップシニア・コンソーシアムでは2014年から3カ所での実証事業を通じてギャップシニアのニーズ把握を試行してきており、いくつかのヒントが見えてきました。今回はギャップシニアの購買行動を読み解くポイントを2つご紹介します。

 ヒント1:モノからニーズが見えてくる
 「何か日々の暮らしの中で困ったなということはありますか?」 こうした問いかけをしてみても、「うーん、別にないなあ」。そのような失敗を繰り返していたある日、「楽に通せる糸とおし」「手芸用ルーペ」といった商品が並んだ棚を見ていた方がふと「最近手の力が弱くなってびんのふたが開かなくて困っているの」と相談され、楽に開けられるびんふた開けを購入いただきました。「楽、便利」を売る商品を見ていたことにより、今苦労していることを楽にしたいというニーズが浮かんできたのでしょう。
 運転免許を返納したために気軽に外出できなくなったという悩みを口にされた方に、家庭菜園キット、セニアカー、電動アシスト付自転車、活動量計をお見せしたところ、電動アシスト自転車と活動量計に強い関心を持たれました。この選択から、この方のニーズはできるだけ自分で行動すること、またそれが可能な身体機能を保つことであると解釈できるでしょう。
 要介護高齢者の身体機能をアセスメントするような考え方では、ギャップシニアの漠然としたニーズをつかむのは困難です。また、抽象的な質問も、負荷が高すぎておっくうさ(まあ、いいやという気持ち)を引き出してしまうだけなので避けるべきです。実際の商品やサービスを糸口にして、そこからニーズを引き出すのは有効なアプローチといえそうです。


 ヒント2:「お楽しみ消費」で試し、「納得消費」につなげる
 実証事業では「何がどう売れるか」が大きな検証ポイントの1つになっています。見えてきたパターンとして、「お楽しみ消費」と「納得消費」が挙げられます。もちろん個々人のタイプや経済状態で差異はあるのですが、警戒心が往々にして高めのギャップシニアは、最初から本当のニーズを満たすための商品に手を出しません。特に実証事業はシニアにとってなじみの薄い場所なので、「ちょっと面白くて機能的なグッズ」(それほど高価でないもの)の購入を通じてその場を試すことになります。人気があるのは変わった素材のストレッチ道具やLEDのついた拡大鏡などで、その日行われたイベントとは必ずしも関係しません。購入経験を通じて警戒心が解け、楽しい気持ちや意欲が生まれてから、本当に実現したいことにつながる消費が行われます。例えば「ウォーキング靴の選び方」講座では、知識の習得や試し履きという体験を通じて、「体を動かして健康を保つ」「快適に歩く」といったニーズに合致すると納得して靴を購入します。 この段階になればイベントによるニーズ発掘は有効な手法となります。

 こういったニーズの顕在化の基盤として、その場やその場にいる人への信頼感があります。また、第6回で紹介した動機づけも重要です。面倒に思えるかもしれませんが、おいしい料理が作られている食堂にはその「予感」が満ちていて、入っただけでおなかがすくのと同じように、信頼感のある場所・動機が高まる場所が作られれば、自然とそこに入った人のニーズが顕在化するはずです。そのような場所を作ることが私たちの願いです。

<バックナンバー>

「第1回 ギャップシニアとはどんな人か」
「第2回 ギャップシニア市場を創造する」
「第3回 ギャップシニア市場は公民連携で拓ける」
「第4回 ギャップシニアの日常生活」
「第5回 ギャップシニアの消費行動」
「第6回 ギャップシニアへのアプローチ」
「第7回 ギャップシニア向け商品開発のコツ~キーワードは「日常」と「洞察」」


※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。