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【シニア】
第5回 ギャップシニアの消費行動

2016年03月08日 岡元真希子


 第4回メールマガジンでは、日本総研の「全国パネルデータ」をもとに、ギャップシニアの暮らしや心身の状態について実態を解説した。今回のメールマガジンでは、特に消費者としてのギャップシニアに注目して紹介する。
 全国パネルデータのもとである日常生活圏域ニーズ調査には、年金や住居種別など、家計に関わるいくつかの項目がある。前回のメールマガジンと同様に、75~84歳のギャップシニアについて見ると、年金種別は「国民年金のみ」が最も多く42.4%、「厚生年金(企業年金なし)」が21%、「厚生年金(企業年金あり)」が22%となっている。また、暮らし向きについては「やや苦しい」が最も多く45%、次いで「ややゆとりがある」が32%である。「苦しい」「やや苦しい」の合計は64%と、「ゆとりがある」「ややゆとりがある」の合計の36%を大幅に上回った。暮らし向きについては、年金種別との相関以上に、持ち家の有無との相関が強い。75~84歳のギャップシニアの81%は持ち家に住んでおり、家賃等の負担が少ないことが経済的な余裕につながっていると考えられる。

 さて、ギャップシニアはどのような消費行動を取っているのか。これについて、残念ながら日常生活圏域ニーズ調査には消費や支出に関する詳細の項目はないため、総務省統計局の平成25年家計調査から、高齢世帯の消費動向について特徴を捉えてみる。具体的には、世帯主の年齢が70代以上の世帯と、40代の世帯とを比較する。世帯人員数が年代によって異なるため、世帯人員一人当たりの支出額を算出して比較する。
 まず、日常的な支出に注目すると一人当たり支出はシニアのほうが若年層よりも高い。世帯主が70代以上の世帯の一人当たり支出月額は108,315円であり、世帯主が40代世帯の91,378円を大きく上回る。食料にかかる支出についても、70代以上世帯では27,274円であり、40代(21,049円)よりも約3割高い。特に果物、野菜・海草、魚介類にかかる食費は、40代世帯の2倍以上である。肉類は購入している金額では40代との差が小さいが、購入単価は40代よりも高いものもある。例えば牛肉の100グラムあたり単価を比較すると、70代世帯では330円であり、40代(223円)よりも高い。
 また、耐久財にかかる支出についても、70代の消費は旺盛である。冷蔵庫・エアコン・テレビなどの購入頻度(100世帯あたりの購入数量)は、70代以上世帯のほうが、40代の世帯よりも高い。単価についても高いものを購入する傾向がみられ、冷蔵庫、エアコンやヒーター、テレビ、などの家電は40代よりも約3割、布団については40代よりも約8割高いものを購入している。
 また、人づき合いにかかる費用が大きいのも特徴である。交際費は40代の3倍以上であり、月額13,983円に上る。交際費には、ご祝儀やお香典などのほか、贈答も含まれる。贈答というとデパートで購入するイメージがあるが、日本総研が2015年12月に実施したアンケート調査によると、70代以上のシニアのうち、月1回以上デパートで買い物をしているのは、女性の36%、男性の24%である。
 このような支出を支えているのは貯金の取り崩しである。世帯主が70代以上の世帯の平均貯蓄額は2,385万円であり、平均で毎月3.5万円を取り崩している。なかでも年収350万円以上の世帯では月に約6万円を取り崩している。

 ギャップシニアのうち、「ゆとりがある」と感じているのは4割弱だが、金融資産を取り崩しながら、若い世代よりも活発な消費行動をしていることが、家計調査から見て取ることができる。
 次回メールマガジンでは、このような消費行動をしているギャップシニアの心理を掘り下げ、シニアのニーズをどのように消費に結び付けていくかについて書き進めたい。

<バックナンバー>

「第1回 ギャップシニアとはどんな人か」
「第2回 ギャップシニア市場を創造する」
「第3回 ギャップシニア市場は公民連携で拓ける」
「第4回 ギャップシニアの日常生活」


※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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