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【シニア】
第1回 ギャップシニアとはどんな人か

2016年01月12日 岡元真希子


 「お芝居を見に行くのが好きだったんだけど、腰痛でずっと座っているのがつらくなってきたの。腰が痛くて、もぞもぞと身体を動かすから、後ろの席の人に迷惑かなあと思って、最近はもう行かなくなっちゃったわ」「一度は富士山に登ろうと思っていたんだけれど、この年で無理をするなと息子に言われて、なんだか行かずじまいになってしまったよ」「庭の敷石につまずいて転んで肩を打ってから、右腕が上がらなくなってしまって、物干し竿に洗濯物を干すのが大変なの」

 そんな高齢者が、あなたの身近にいませんか。日本総研が注目している高齢者の一例です。要介護というわけではないけれど、日常生活のなかで諦めや我慢が積み重なっているという意味では、アクティブシニア(元気高齢者)ともちょっと違います。日本総研では、2014年にこのような高齢者を「ギャップシニア」と名づけました。
 高齢になって病気にかかったり、体力が低下したりすると「できること」が減り、「やりたいこと」との間に隔たりが生じます。そのときに、「どうやったらできるようになるか」と考えたり工夫したりするのではなく、「年だから仕方がない」と諦め、我慢することによって、この隔たりを解消しようとするのがギャップシニアの特徴です。そのように、みずから自分の気持ちを抑制してしまうと、さらに「できること」が減ってきて、生活が不活発になり、徐々に要介護状態に近づいてしまいます。

 ギャップシニアは、二つのギャップに直面しています。ひとつめは、先ほど申し上げた「できること」と「やりたいこと」とのギャップですが、さらに、サービスや情報の面でも「ギャップ」があります。要介護になって認定を受ければ、介護保険のさまざまなサービスを利用するチャンスも広がるだけでなく、ケアマネジャーを通じて、生活上の課題が明らかになり、さまざまな情報が入手できるようになります。一方で、ギャップシニアには、サービスも情報も届きにくい状況にあります。もちろん、元気でアクティブな高齢者のように、自ら欲しいものを探す、といった積極的な行動に出ることもまれです。なぜなら、自分自身が「困っている」という認識が弱く、情報収集意欲が低いため、情報が集まりにくいのです。逆に、サービスを提供する側から見ても、アクティブシニアに対するマスコミュニケーションは届けにくく、さりとて要介護高齢者のようにケアマネジャーというキーパーソンを通じてアプローチするという方法もとれません。そういう意味で、制度・サービス・情報の面においても、狭間の位置にあるという意味で「ギャップ」に直面しているのです。

 情報やサービスが届きにくいギャップシニアは、逆の見方をすると、市場として開拓の余地が大きいとも言えます。次回メールマガジンでは、シニア市場におけるギャップシニアの位置づけや、ギャップシニア市場の特徴について書いていきたいと思います。


※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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