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Business & Economic Review 2009年12月号

【特集1 財政緊縮下における自治体の公営企業改革】
下水道事業再生の方向性─市町村の役割と新たな官民連携

2009年11月25日 石田直美


要約

  1. 下水道事業には、法適用・非適用を含めて、合計年間2兆円弱もの繰入金が投入されており、一般会計に大きな負担となっている。とくに人口の少ない地域では施設や運営の効率性が低くならざるを得ず、恒常的な赤字体質となっている。
  2. これまでも下水道事業の経営改善に向け、運転管理の包括委託や不要不急の更新投資の先送り等がなされてきた。しかし、事業全体での構造的かつ継続的な経営改善という観点からは十分な成果を挙げていない。コスト削減とともに質の低下といった弊害も生じている。
  3. 海外に目を転じると、何十もの施設をまとめて広域的なオペレーションを行うことで施設を無人化したり、更新投資のマネジメントに民間を活用する等により、高コストとなりがちな下水道事業の効率化を図っている。わが国の下水道事業でも、広域的なオペレーションや更新投資へのCM(コンストラクションマネジメント)の導入等を進めることが求められる。
  4. 多額の繰入金が一般会計を圧迫している現状を踏まえれば、繰入金削減に向けた経営目標を設定することが求められる。しかし、2兆円弱の繰入金のうち、雨水処理負担金が6,200億円を占めるなど、すべてが赤字補填を目的としたものとはいえない。繰入金の内訳を情報開示し、議会や住民との議論を通じて使用料や赤字補填的な繰入金の水準等を決定していくことが必要である。
  5. 今後は一部の都市を除くと人口が減少し公共投資の負担が増す。耐用年数が50年以上の下水道の更新では、50年先の地域の将来を見据えた投資が求められる。今後は少子高齢化への対応や低炭素社会への移行の観点からコンパクトシティが時代の流れとなり、場合によっては施設の閉鎖等、将来負担を増大させないための措置をとることも求められる。市町村には、まちづくりと一体で、地域の下水道の将来ビジョンを描き、実行していくことが期待される。
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