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25%削減目標の達成と経済成長は両立するのか?

2009年11月02日 三木優


 鳩山総理が国連気候変動首脳会合において表明した「温室効果ガスを2020年までに1990年比で25%削減する」という目標を巡って、様々な意見・分析が飛び交っている。個々の内容については、各メディアやインターネットを参照して頂くとして、議論が白熱しているのは、25%削減目標について「経済を駄目にする派」と「経済成長に繋がる派」の論戦である。

 「経済を駄目にする派」は、前麻生政権の中期目標検討委員会での分析などを引用し、家計負担が36万円増加することやGDP低下・失業率上昇に繋がるとしている。一方、「経済成長に繋がる派」は、ポーター仮説を引き合いにして、環境規制が競争力や生産性の向上に繋がるので、それによって負担が軽減されるだけでなく、グリーンな産業の発展により経済成長に繋がるとしている。

 これらの議論では、それぞれの主張に一理あると感じる反面、それぞれが議論の前提条件を自由に設定しているために、意味のある論戦になっていない。例えば25%削減目標は、その全てを国内削減のみで達成しないことが明言されているのに、「経済を駄目にする派」は25%削減を全量国内で実施した場合の分析結果を使っている。「経済成長に繋がる派」も同様でポーター仮説は、「適切に設計された」環境規制が競争力や生産性の向上に繋がるとしているのに、25%削減という高い目標にも関わらず、そこから設計される環境規制を「適切」であるとしている。
このようなすれ違いの議論の応酬になっている最大の原因は、25%削減目標の中身が何も決まっていないためと考えられる。民主党政権に替わったばかりであり、時間的な制約があったとしても国際会議で総理が発言した「公約」について、その達成プロセスが何も決まっていないというのは異常である。

 現在、経済産業省・環境省・外務省が協力して、25%削減目標を達成するために何が出来るのか検討を進めている段階である。民主党は政治主導を掲げて、政策決定プロセスを大きく変更することを表明している。25%削減目標については、非常に関心が高いことをふまえれば、政治的判断で国民・経済界に対して、検討内容や方針を出来るだけ早い段階で公表し、意味のある議論がなされるように、その前提条件をしっかりと固めるべきである。
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