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Sohatsu Eyes

関係の見直しが進むビジネスと生物多様性

2008年04月22日 古賀啓一



来月の生物多様性条約COP9を控え、4月2-3日の日程で「ビジネスと生物多様性」と銘打たれた国際会議が開かれ、これに私も参加してきました。ドイツ技術協力公社(GTZ)の主催によるこの会議では、民間セクターが生物多様性とどう係わっているのか、先進事例がステークホルダー間で共有されました。会場はCOP9の開催地でもあるボンで、会議には、企業、NGO、行政、研究機関などから200人以上が参加しました。

会議のプレゼンテーターは西側先進国がほとんどでした。そのためなのか、プレゼンテーションには面白い共通点がありました。それは、プレゼンテーターが飲料品メーカー、金融機関、製紙会社など異なる業界にありながら、それぞれの事業における生物多様性のリスクと事業機会について必ず言及していた、ということです。GRI (Global Reporting Initiative) や日本の環境報告ガイドラインでも生物多様性についての言及がみられるというのも、企業を取り巻く状況の変化を表していると言えます。企業は事業リスクと事業機会の両面からの評価において、生物多様性の側面からも語ることができるようになる必要が出てくるでしょう。

プレゼンテーションを聞いた中でもうひとつ感じたのは、生物多様性が特に中小企業にとっての新しい事業機会になっているということです。生物多様性に富む途上国で大規模な開発を行うグローバルな大企業にはNPOからの圧力がかかっており、こうしたリスクに対応するために生物多様性保全に向けた取組が実施されています。一方で、中小企業にはそうした圧力がかかっておらず、むしろ積極的に生物多様性を意識した商品を開発することで差別化・ブランド化することに成功しているようです。

こうした先進的な取組が集まる一方で、まだ欧州でも生物多様性についての正確な理解が十分に広まっていない状況にあるようです。子供が庭の植物を芝生以外知らない、という発言が会議の中で登場しましたが、これに象徴されるように、生物多様性の保全を進めるためには生物についての理解が必要であり、そのためにはまず生物に触れるところから始める必要があるのかもしれません。翻ってみて日本はどうなのでしょう。総合学習や企業による社会貢献活動などで環境学習は広まりつつあるようにも見えます。日本における生物多様性についての認知度の向上がはっきりすれば、生物多様性を用いた差別化・ブランド化の成功可能性が高まり、企業による取組がますます促進されると考えられます。

2010年のCOP10は日本での開催が決まりました。これで国内での生物多様性についての認知度は確実に高まりを見せるでしょう。すでに生物多様性についてのイニシアティブの署名をアピールする企業も現れ始めており、取組がどう進むのか注目されます。

※eyesは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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