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【ヘルスケア】
統計データから見える超高齢社会のいま

2021年02月09日 山崎香織


 高齢化社会と言われて久しいが、その実像は時が経つにつれて大きく変化している。高齢化が進むスピードは世界でも最も速い上に、新型コロナウイルス感染症による生活様式の変化に伴い、デジタル利用状況などは急激に変化しつつある。一方、人々の「高齢者」や「高齢者の生活」に対する認識は、自身の家族のエピソードなどに左右されがちである。

 そこで今回は、三つの統計データに着目し、高齢者やその生活に対するイメージを最新のものにアップデートするきっかけを提供したい。

 一つ目は「平均余命」である。平均余命とは、現在その年齢の人が生存する年数の平均を指す。令和元年簡易生命表(厚生労働省)によると、2019年時点で65歳の人の平均余命は男性が19.83歳、女性24.63歳である。一方、この世代が生まれた1954年時点で65歳の人の平均余命は男性が12.88歳、女性15.00歳であり、65年間でそれぞれ約7年、10年近く延びている。今の高齢者にとって、その祖父母世代と自身のシニアライフではこれだけ「差分」が存在するのだが、実はこれを見落としがちである。自分自身や家族の世代の平均余命を確認してみると、上の世代よりも長寿の可能性が高いことを実感できるだろう。

令和元年簡易生命表の概況

 二つ目は「世帯構造」である。2019(令和元)年国民生活基礎調査(厚生労働省)によると、65歳以上の人のいる世帯は、1989年は1,077万世帯だったが2019年は2,558万世帯と約2.5倍に増えた。一方、その30年間でその内訳は劇的に変化した。例えば、1970年代の生活を描いた「ちびまる子ちゃん」は70代の祖父母とともに暮らしており、当時は最も多く見られたスタイルだった。しかし、そのような三世代世帯の割合は1989年の40.7%から2019年には9.4%に急減した。代わりに夫婦のみの世帯は18.2%から32.3%、単独世帯は14.8%から28.8%と、いずれもほぼ倍増した。高齢者向けのサービスや施策は、同居や近居の家族を暗黙の前提としている場合が依然として多いが、今後はさらに単独世帯が増える前提での見直しを迫られるだろう。

 三つ目は「インターネット利用率」である。令和元年通信利用動向調査(総務省)によると、60代以上のインターネット利用率は2018年と比較して2019年に大きく上昇した。特に70~79歳は51.0%から74.2%に、80歳以上は21.5%から57.5%と急伸した。令和2年調査は現在実施中だが、コロナ禍に見舞われた2020年を含め、今後さらに利用率が高まると思われる。

 80~90代の方が、一人で暮らしながらも、遠方に住む家族や友人、あるいは共通の趣味や関心を持った人たちと、オンラインを駆使しながらコミュニケーションを楽しめる環境づくりが今こそ求められている。

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※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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