2008年06月26日 |
生物多様性条約COP9の結果と『COP10 Nagoya 2010』へのロードマップ |
要 約 |
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1. | 生物多様性条約(CBD)の第9回締約国会議(COP9)が、2008年5月19~30日の会期にて、ドイツ・ボンにて、開催された。CBDは、a.生物多様性の保全、b.その構成要素の持続可能な利用、c.遺伝資源の利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分(ABS)、の3つを目的とした国際環境条約である。次回のCOP10が、2010年に、名古屋にて開催されることが、正式決定された。また、「2010年目標(生物多様性の損失速度を2010 年までに顕著に減少させる)」を達成するという共通の目的を根幹に抱きながら、約26の議題について交渉がなされた。 | |
2. | 評価されるべき成果として、「遺伝資源へのアクセスと利益配分(ABS)」の議題について、「国際的枠組み」に関するCOP10までの「ロードマップ」が採択されたこと、及び、海洋及び沿岸の生態系の議題に関して、新たな「科学的評価基準(Scientific Criteria)」などが採択されたことが挙げられる。 | |
3. | 注目されたトピックとして、まず、バイオ燃料がある。バイオ燃料の生産において、便益の最大化とリスクの最小化、及び、民間セクターによるバイオ燃料の生産に関する社会的・環境的なパフォーマンスの向上、などが合意に至った。次に、生物多様性と気候変動のトピックであるが、専門家グループの設置が決定された。今後、CBDから気候変動枠組み条約に対して、相互の連関についての情報のインプットを行う。 | |
4. | COP9の結果を受けて、利害関係者は、すでに、「COP10 Nagoya 2010」へのロードマップの上を歩み始めている。COP10は、2010年目標が期限を、国際的枠組みが交渉期限を、それぞれ迎える場である。また、2010年は、「国際生物多様性年」であり、COP10はCBDにとって大きな節目である。COP10への対応が適切であれば、開催国・日本の国際的地位は上がる一方、対応を誤ると、不適切な国際的枠組みの採択などにつながってしまうリスクがある。 | |
5. | まず、2010年目標について、2006年に発表された「地球規模生物多様性概況第2版」によると、保全の焦点となる分野のうち、状況に改善が見られたのは、保護地域の指定範囲、及び、水域生態系の水質の2つのみであった。これに対してどのような対策が実施されるのか、注目しなければならない。 | |
6. | 次に、ABSの国際枠組みについては、採択が予定されている「枠組み」が、不適切なものとならないように関与していく必要がある。COP10までに、3回の作業部会と3回の専門家会合が開催されることが決定した。専門家会合は、コンプライアンスなどの議題を含み、COP10まで数ヶ月単位で重要な決定がなされていく。従って、生物多様性とABSに強い利害関係を持つ者は、コンプライアンスの専門家会合の結果に注意し、作業部会に向けて、情報発信をしていくことが必要である。 | |
7. | 企業に求められる戦略として、生物多様性に関与するなら、必ず、ABSの観点を入れることが求められる。特に、ABSに関しては、CBDが採択している「ボン・ガイドライン」の内容に極力配慮し、同ガイドラインを遵守した企業活動を行っていることを情報発信すべきである。 | |
8. | 求められる政策として、2010年以前に、保全のイニシアティブを一層積極的に発信して、それを実施していくことが挙げられる。2010年目標の達成を困難とする向きもある。しかし、生物多様性の保全は、永久に続くものである。次の目標として、「2012」あるいは」「2050」という言葉が、関係者の間で発せられるようになった。日本は2010年までなにをしてきたか」を述べるとともに、「2010年以降なにをしていくか」についてさらなる具体案を出して、リーダーシップを発揮することが、すでにカウントダウンが始まったロードマップの中で望まれている。 | |
目次 | ||
添付資料 2 推奨文献/情報 添付資料 3 COP10 Nagoya 2010へのロードマップ |