2008年06月19日 |
わが国成長企業向け投資の促進に向けた環境整備 |
要旨 |
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1. | わが国経済の持続的発展を維持するためには、新たな技術やビジネスモデルを活用した事業展開を目指す企業の創出・成長を促進し、経済の新陳代謝を活発化させることが重要である。わが国の開廃業の動向をみると、新規開業率は低迷しており、企業数の減少傾向が見られるなど、経済活力の低下が懸念される。このため、わが国では起業の活発化ならびに成長企業の育成が喫緊の課題である。しかしながら、わが国では成長企業に投資を行う投資家層ならびに市場の厚みが欧米先進国に比べて不十分であり、資金調達側と資金供給側の間でファンディングギャップが生じていることが指摘されている。 |
2. | わが国では、ベンチャー投資促進のための各種環境整備が実施されている。それにもかかわらず、投資が盛り上がらない要因として、a.起業間もない企業は情報の非対称性が大きい、b.エンジェルやベンチャーキャピタル、機関投資家等の投資や機能発揮が不十分、c.新興市場における審査やコスト、価格形成、などの問題が指摘できる。 |
3. | 海外に目を転じてみると、アメリカでは、企業の成長ステージごとに、エンジェル、ベンチャーキャピタル、機関投資家などの投資家が存在している。また、重層的な市場構造やEXITの多様な選択肢の存在がこうした投資家の投資行動を支えている。 イギリスでは、ベンチャー企業の育成が国の政策課題として位置づけられており、年金改革や優遇税制措置などが進められている。とりわけ、ロンドン証券取引所の代替投資市場(AIM)は、Nomadと呼ばれる認定アドバイザー制度が導入されており、わが国にとって参考となる点も多い。 |
4. | 以上の点を踏まえ、わが国において成長企業向け資金供給を活発化させるとともに、成長を志向する企業の資金調達の場として資本市場が一段と活用されるためには、成長企業振興のための環境整備、すなわち、わが国で不十分と考えられる資源や機能の拡充・強化等の取り組み、および資本市場の整備が不可欠と考えられる。それらの具体的方策は以下の通り。 (1)成長企業を取り巻く環境の整備:
機関投資家の投資対象となるようなベンチャー企業、とりわけ技術系のベンチャー企業の創出が促進される環境整備が必要である。また、成長途上の企業であっても、「投資家の信頼に値する企業」として経営組織や情報開示体制の整備が求められる。 (2)ベンチャー投資活性化のための環境整備: 機関投資家の投資対象として成長企業が組み込まれるような仕組みの構築、エンジェルや海外投資家の投資にかかる税制の拡充、ならびに、市場の新陳代謝促進を通じ成長企業向け市場の質の向上、IPO以外のEXIT環境の整備などが求められる。 (3)市場が有効に機能するための環境整備: 自由度の高い「プロ向け市場」の活用が期待される。ただし、プロ向け市場創設の前提として、既存市場の機能強化あるいは市場が有効に機能するための周辺環境の整備も必要である。 |