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2007年10月03日

急がれる連邦型道州制の導入 ~真の自立で地域経済・社会の再生を~

要旨
(イ) わが国では地方分権一括法や市町村合併など、これまで様々な地方制度改革が推進。しかし改革目標の地方活性化は未実現。むしろ経済停滞が深刻化し、多くの地域でコミュニティー崩壊の危機。一部に地方の停滞や所得格差はグローバル競争下不可避の見方。仮にその見方が正しければ、他の先進各国も同様な問題に直面し、処方箋が作成されている筋合い。一方、わが国では地方の停滞打破に向け道州制論議が盛り上がり。今後、わが国はどう対処すべきか。こうした問題意識から、まずわが国の地方・都市問題を概観し、次いで先進各国の近年の動向をたどり、最後に取り組むべき課題を整理した。
(ロ) まず地方サイドでは停滞傾向が深刻化。就業者の減少など景気回復に逆行する雇用情勢のなか、都市への流出を主因に人口減少傾向が年を追って加速。一方、都市圏では、今後生産年齢人口がこれまでの増加から一転して減少に向かう見通し。加えて、人口移動によって都市圏が雇用増加の中心となるなか、所得水準の低下に歯止めが掛からず。今後、都市圏に依存した成長路線は破綻するリスク大。
(ハ) 主要先進各国をみると、相似する部分もあるものの、全体としてわが国と問題を共有する国は見当たらず。 まず、OECD加盟の主要20カ国について近年の所得変化を購買力平価ベースの1人あたりGDPでみると、バラツキが拡がるなか、わが国は下から3番目にとどまる一方、大幅な増加を実現した国も多数。グローバル化に伴って所得低下の圧力が増大したとの見方は説得力を欠く。
次に、地方の疲弊や都市集中の動向をみると、20世紀後半、わが国以外で一極集中が進行した国は皆無。逆に各国では、中心都市圏の人口シェアが減少し、地方圏が躍進。地方の疲弊や人口減少、格差問題をグローバル化に帰す見方も妥当性を欠く。
少子化問題も各国と大きく異なる動き。出生率の低下傾向に歯止めが掛からないわが国に対し、総じて各国では、従来出生率が低かった国々で上昇、相対的に高い国々では引き続き高い出生率が維持。地方圏を含めた活力ある経済発展と所得の増加が寄与。
(ニ) そうした各国の成果には長期にわたる様々な取り組み。主な取り組みを整理すると、次の通り。
第1が労働市場改革。かつて雇用政策は失業給付など弱者救済策。しかし近年、成長戦略の要。高付加価値産業創出のために必要な人材供給が政策として強力に推進。
第2は地域独自の強みを引き出す差別化戦略。高付加価値の産業・雇用の創出には、多様な新たな挑戦が許容される自由度のあるスキームが大前提。
第3がさらなる公的部門の見直し。セーフティー・ネット分野を除くと、わが国は、米英などアングロ・サクソン諸国のみならず独仏など欧州大陸諸国よりも大きな政府。
(ホ) 今後、わが国が、経済再生に向けて取り組むべき最大の課題は中央集権体制の打破。まず、購買力平価でみた1人当たりGDPと総人口との関係を対比すると、近年、人口規模の大きい国よりも、小さい国で1人当たりGDPが大きい傾向。なおアメリカは、国全体でみれば3億人規模であるものの州の権限が強く、州別にみればカリフォルニア州以外はすべて人口が2,000万人以下であり、欧州中小国とほぼ同規模。
人口規模1,000万人前後の中小国が旺盛な成長力を持つに至った理由は何か。こうした視点からまず過去の状況を整理すると、かつては国内市場規模の大きさが成長の源泉。しかし、グローバル化によって国境の制約は後退。代わって、地域に即した独自の雇用・産業政策を強力に推進できるかが成長力を左右する最大の鍵に。もっとも、規模が小さければ小さいほど有利という訳でもない。ルクセンブルクが大学教育を他国にアウトソースしている実例に象徴される通り、独自路線では公的サービスが非効率に陥る恐れがあるため。
総括すれば、規模の大小に伴うメリットとデメリットが全体として調和する一つの均衡点として、今日人口規模1,000万人前後が最適規模となったという仮説成立の可能性。そのようにみると、わが国経済・社会、とりわけ地域経済・社会が再び活力を取り戻すために、現行の中央集権体制を打破し、画一的なナショナル・スタンダードから肌理細かな地域独自戦略へ転換することが焦眉の急に。
(ヘ) わが国でも地方分権一括法が2000年4月に施行、市町村の基礎的自治体で平成の大合併実施など取り組みは相当進展。しかし、地方の疲弊を直視すれば取り組みは不充分。
それでは、これまでの取り組みに何が足らなかったのか。こうした観点からみると、かつて中央集権の雄でありながら、82年に分権改革を断行し、経済再生に成功したフランスが参考に。そのエッセンスは、国から県、市町村という垂直構造を打破し、地方の主体性を前面に引き出した点。国の容喙を排除し地域が独自路線を追求するスキーム。そうした観点からみると、国の関与が部分的にも残存するリスクのある道州制ではなく、国と地方との垂直的関係が断ち切られる連邦型道州制の導入の成否がポイント。
(ト) 連邦型道州制では税財源は徹底して地方移譲に。しかしわが国では法人二税が問題。連邦国家ドイツのスキームが参考に。従来、わが国でも行われてきた国と地方政府間の垂直調整に、州政府間の水平調整も組み合わせ、全体の財源調整制度が構築。さらに、各国ではそもそも法人税は国税とし、垂直分配財源とする枠組みが支配的。
(チ) 近年欧米ではITを活用して一段の行財政改革を断行する動きが本格化。とりわけ、イギリスが先行。すでに同国では、政府各機関で重複・相似した業務を統合するシェアード・サービスで大幅なコスト削減の成果。加えて今後、国と地方政府、さらに公的セクターと民間セクターの区分を克服し、国のあり方の根本的変革を追求する構え。
 
 
    目次
  1. はじめに


  2. わが国地方圏と都市圏が直面する問題
    (1)地方経済の停滞
    (2)都市圏経済の行方


  3. 各国の動向
    (1)堅調な所得の増加
    (2)活力ある地方経済
    (3)少子化問題の深刻化回避


  4. 活性化の原動力
    (1)労働市場改革
    (2)地域に即した産業政策
    (3)行財政改革の続行


  5. 今後のわが国の課題
    (1)中央集権体制の打破
    (2)分権改革の核心
    (3)財源の水平調整
    (4)さらなる行財政改革
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