コンサルティングサービス
経営コラム
経済・政策レポート
会社情報

会社情報


2007年04月19日

英国における金融政策のイノベーションと日本への含意 ~インフレターゲティング政策導入の条件は何か~

要旨
1.  英国では、1992年以降息の長い景気拡大が持続。特にこの10年は、安定的な景気拡大傾向が顕著。この背景には、市場原理の導入をテコに経済体質が改善したことがあるが、BOEによる機動的な金融政策運営の役割も見逃せない。
 現在英国の金融政策は、インフレターゲティング政策を採用し、これが英国の長期安定成長への契機となった可能性。同政策導入の背景は、ポンド危機による金融政策への信頼感喪失や、先行導入国の成功事例、などがある。
2.  インフレターゲティング政策を導入するにあたっての最大の問題は、「最適なターゲット」の規定方法がないこと。そのためBOEは、ターゲットを変更するなどの制度変更を繰り返し、「最適なターゲット」を模索。加えて、足許の政策金利水準についてはインフレ期待に連動する形で金融政策を運営。結果として、足許の物価動向に過度に拘束されることなく、市場の期待を一定範囲内にコントロールしながら、将来の経済・物価の安定を図ろうというフォワードルッキング(先見的)な政策運営が可能に。
 また、BOEが1997年6月に大蔵省から独立したことは、インフレターゲティング政策の効力向上に大きく寄与。月1回MPC(金融政策委員会)を開催し、多数決で政策金利を決定する方法をBOEは採用。MPC参加メンバーの政策金利バイアスと物価に連動性があることは、こうしたMPCによる金融政策の運営が物価のコントロールに効果的に働いていることを示唆。
3.  インフレターゲティング政策は「成功している」との評価が大半。英国で成功した要因として、「サービス経済化」が進展したことを指摘可能。
 財価格は海外の影響を多分に受けざるを得ない一方、サービス価格は国内の要因が色濃く反映。そのため、国内の期待インフレ率をコントロールするインフレターゲティング政策は、サービス価格においてより効力を発揮しやすい、といえる。インフレターゲティング政策は、「サービス経済化」が並行して進展したことで、物価安定に対する効力を一段と発揮できる、と言える。
4.  このように物価安定が定着するなか、BOEは、金融政策の第2の目的でもある「景気に配慮した政策運営」を追及することが可能に。とりわけ注目されるのが住宅価格を意識した政策運営。これにより実現した持続的な住宅価格の上昇は、家計の担保余力拡大に寄与。その結果、家計は借入を増加させ、資産効果やキャッシュアウトを通じて、個人消費が持続的に拡大。
 もっとも、足許の状況を仔細に分析すると、長期安定成長に貢献した英国のこうした金融政策にも限界が窺われはじめている。個人消費拡大に伴う家計債務の増大により、家計のバランスシートが悪化し、金融政策の景気に対するコントロール力が薄れてきている。
 金融政策の有効性を回復するためには、家計のバランスシート改善が必須。もっとも、持続可能な水準まで家計債務を圧縮するためには、短期間では、個人消費に多大な影響が出てしまう。長期間で圧縮したとしてもでも、資産効果が現在ほど期待できないため、英国の個人消費は力強さを欠くことが想定される。
5.  以上のような英国の事例からは、今後の運営方針が問われている日本の金融政策に対し、2つのインプリケーションを導き出せる。第1に、インフレターゲティング政策導入する際には、政策運営においてより一層の柔軟性・透明性を確保する必要があること。第2に、不動産バブルの発生を未然に防ぐことを強く意識した金融政策スタンスをとること。
会社情報
社長メッセージ

会社概要

事業内容

日本総研グループ
ニュースリリース

国内拠点

海外拠点
人材への取り組み
環境への取り組み
ダイバーシティ&健康経営
会社案内(PDF版)
メディア掲載・書籍
インターンシップ

会社情報に関する
お問い合わせ