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2007年04月04日

拡大する所得収支黒字と投資立国実現への課題

要旨
1.  本レポートでは、わが国の対外資産負債、所得収支構造の現状を諸先進国との比較から整理したうえで、所得収支黒字を経済成長の源泉として活用していく「投資立国」確立に向けた課題を検討した。
2.  足元の所得収支黒字の拡大には、「証券投資収益受取」の寄与が最も大きく、「直接投資収益受取」がこれに続いている。「投資収益支払」もここ3年連続で増加しているものの、受取の拡大はこれを大きく上回るものとなっている。投資収益の源泉となる対外資産残高をみると、証券投資は、過去10年間に着実な増加傾向。一方、直接投資は、伸び悩み傾向にある。
3.  わが国の所得収支黒字は、金額的には米国、英国を含む諸外国を大きく上回っているものの、その構造を詳しく見ると、米英両国対比、二つの面で「未成熟さ」がうかがわれる。
4.  第一は、所得収支黒字を生み出すマネーの流れが「一方通行型」にとどまっている点。日本では、「自国の貿易黒字→その結果蓄積された資産の対外運用→所得収支受取」という構図が基本。一方、G5諸国をみると、米国、英国を典型として「世界からの投資資金の流入→米英企業・投資家のグローバルな投資→所得収支受取」という「ハブセンター型」に進化している。
5.  第二は、対外投資収益率の低さ。これは、米英に比べa.利益率の低い証券投資と外貨準備に資産内容が偏っていること、b.直接投資の収益率が低いこと、が要因。a.証券投資が多い背景には、バブル崩壊後の企業のリスク許容度・管理能力の低下。また、為替介入により増加した外貨準備も、運用に際しては、収益性よりも安定性が重視される。b.直接投資の収益率の低さは、日本企業の発想がなお「国内市場中心主義」から脱却できていないことを示唆。日本の対外直接投資は、製造業の国際競争力の高さを活かしている点では評価できる半面、海外のリソース、ビジネスモデルをダイナミックに取り込んでいるとは必ずしもいえない。
6.  以上のように、わが国の所得収支黒字は、金額的には増えたものの、投資資金・ビジネスモデルともに依然、「自前主義」の色彩が強く残り、「対外投資の巧拙」の観点からは、課題が多い。貿易面では輸出と輸入がともに伸びる国際的な産業連関体制の構築が進んだが、今後は対外投資においても、同様にグローバルな視点で海外のリソースをダイナミックに活用し、収益率を向上させていくことが望まれる。
7.  既に変化の兆しはみられ、近年、日本企業の財務体質が強化され、企業のリスク許容度の回復を示唆。収益の高い投資やリスク管理の実績が積み重ねられていけば、ビジネスセンターとしての日本の魅力が見直され、海外からの資金流入が活発化することも展望可能。
8.  政府としても、a.規制改革・市場化テストの活用をテコとしたイノベーティブな国内市場環境の創出、b.クロスボーダー活動に関わるリスク低減につながるM&Aを含む国際的な経済・金融取引ルールの調和、などを通じ、民間の取組みをサポートすることが求められている。
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