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2007年01月12日

健康保険財政の長期推計 ~少子高齢社会における新制度の持続可能性~

要旨
1. 少子高齢社会のなかで持続可能な社会保障制度の構築は、わが国にとって極めて重要な課題である。この課題のもと、2006年6月、健康保険改正法が成立した。少子高齢化は、政府の人口推計における標準的シナリオでも、今後約50年間の長期にわたり進行していく。他方、改正法を受けた、組合管掌健康保険(組合健保)、政府管掌健康保険(政管健保)など各健保の財政見通しは、15年度までのものが政府から示されているに過ぎない。これでは、少子高齢社会のなかで新制度が持続可能なのか否かの展望を得るには不十分である。そこで、本稿では、改正法に基づく各健保財政を50年度まで機械的に延長推計し、それを受けて、今後の対応を提示した。
2. 新制度における健保の収入と支出の構成は、主に大企業勤務のサラリーマンが加入している組合健保を例にとれば、次のようになる。先ず、収入は、現行同様、ほぼ健康保険料のみである。次に、主な支出は、組合加入者に対する医療給付のほか、「後期高齢者支援金」、「前期高齢者納付金」、「退職者医療拠出金」(以下、支援金等)がある。支援金等は、何れも、高齢者医療費に関する現役世代からの財政支援機能を持っている。なお、主に中小企業勤務のサラリーマンが加入している政管健保、公務員などが加入している共済組合もほぼ同様の構成である。
3. 新制度がスタートする08年度から50年度まで、各健保財政を推計した結果を要すれば、高齢者医療費とりわけ後期高齢者医療費の増大を受け、支援金等が各健保財政を、現在以上に圧迫していく。支援金等の出し手のうち、最も強い影響を受ける組合健保の場合、08年度の支出5.8兆円のうち医療給付費は3.2兆円、支援金等は2.6兆円であり、この時点では支援金等が医療給付費を下回っている。しかしながら、15年度には、医療給付費と支援金等は、それぞれ3.6兆円、3.5兆円とほぼ等しくなり、以降、支援金等が医療給付費を上回り続け、その幅も大きくなっていく。例えば、25年度には、医療給付費4.2兆円に対し支援金等は0.5兆円上回る4.7兆円、50年度には、医療給付費5.5兆円に対し支援金等は4.1兆円上回る9.6兆円となる。組合健保が健康保険料を集めるのは、加入者に給付を行うことが主目的のはずであるにもかかわらず、支援金等がそれを上回る主客転倒した姿になってしまう。
4. もっとも、組合健保が、医療給付費をも上回る支援金等を何ら対策を講ずることなく支払い続けていくと仮定するのは現実的ではない。実際には、支援金等負担の増大につれ、再度改革を求める声が高まり、同時に、企業側の対処策として、支援金等の算定基準となる加入者数の抑制すなわち正規雇用の抑制や健保組合解散などの動きが強まることとなろう。このようにみると、06年の健康保険法改正によって、少子高齢化が進行するもとでの健康保険制度の持続可能性が確保されたとは結論付けにくい。
5. 今後の対応として、本稿の推計から浮かび上がるのは国民医療費とりわけ高齢者医療費の効率化と経済成長による負担能力の維持向上である。加えて、幅広い世代が負担するため、支援金等を税へ切り替えることも重要な課題となろう。
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