要旨 |
1. |
関西経済 は、2002年初め以降、景気上昇局面が続いている。今回の景気拡大局面は、長さでは「いざなぎ景気」に匹敵するが、実感が伴わないという見方も根強い。この背景は、「いざなぎ景気」当時と異なり、企業数で多くを占める中小企業や小企業で「業況が良い」企業の割合がまだ少ないことや、企業部門から家計部門への回復の波及が緩やかであることが影響している。
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2. |
業況の水準は大企業に及ばないが、方向性としての景気回復は中小企業、小企業でも生じている。また、景気拡大の波及効果は家計部門にも及んできており、労働需給や雇用・賃金の指標が改善し、個人消費も回復してきている。
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3. |
輸出や設備投資ほど変動が激しくない個人消費が成長に大きく寄与するようになれば、景気は更に安定性を増す。ただし、今のところ個人消費は、輸出や設備投資の成長寄与度が一気に落ちた場合にそのすべてを肩代わりできるほど強くはない。このため、輸出と設備投資の動向が景気の先行きの鍵を握る。とりわけ、生産や稼働率、企業収益などを通じて設備投資にも影響を及ぼすことになる輸出の動向には注意を要する。 |
4. |
米国経済は2%台の成長へのソフトランディングが見込まれ、ゼロ成長や1%成長に失速して関西の米国向け輸出が大幅なマイナスになる事態は避けられるとみられる。関西の中国向け輸出は、中国の実質経済成長率の動きに比べて振幅が極めて大きいが、中国で投資の行き過ぎを抑制しようとする動きによって成長ペースがやや緩やかになるとしても、一定以上の成長を確保するような政策運営がなされると考えられることから、中国向け輸出が失速する可能性は小さいとみられる。 |
5. |
2007年度の関西経済は、輸出と設備投資が2006年度の高い伸び率に比べると鈍化するが、個人消費の増加が景気の下支え役を果たすため、一時的に減速感が出ることはあっても、基調としては景気上昇が続き、実質経済成長率は1.9%と見込まれる。 |
6. |
リスクシナリオとして、中国向け輸出、米国向け輸出が10%減少する場合の影響を試算してみると、中国向け輸出10%減少の場合、関西の製造業の製造品出荷額対比マイナス0.7%の影響が出る。関西以外の地域(マイナス0.4%)や全国(マイナス0.5%)に比べると、関西は中国向け輸出が減少する場合に、より大きな影響を受ける。他方、米国向け輸出10%減少の場合には、関西の製造品出荷額対比マイナス0.8%の影響となり、関西以外の地域(マイナス0.9%)や全国(マイナス0.9%)に比べて関西の影響はやや小さいが、中国向け輸出減少の影響を上回る。 |